以下、論文紹介と解説です。

Apostolovic D, et al. The red meat allergy syndrome in Sweden. Allergo journal international 2016; 25:49-54.

赤身肉アレルギーに関し、赤身肉に含まれる『α‐Gal』に関してレビューした。

■ 最近10年間に、赤身肉の摂取後数時間で重篤なアレルギー反応を示す新しいタイプの食物アレルギーが見つかった。

■ このアレルギー反応は、哺乳類の肉に見られる糖鎖エピトープであるgalactose-α-1,3-galactose (α-Gal)に対するIgE抗体によるものである。

■ このレビューでは、スウェーデンにおける赤身肉アレルギー症候群を紹介し、糖鎖に対する免疫反応の特徴を考察し、赤身肉における耐熱性のα‐Gal含有蛋白質の存在に光を当てる。

■ スウェーデンにおける赤身肉アレルギーと診断される症例数は、過去数年間で有意に増加した。

■ 全ての患者がダニに刺されていた。

■ 最近の研究は、α‐GalがヨーロッパマダニであるIxodes ricinus (I. ricinus)に存在することを示した。

■ したがって、抗α‐Gal IgE抗体とダニ咬傷には強い関連性が潜在的にあり、続発性の現象としての赤身肉アレルギーの発症を伴う。

■ イムノプロテオミクスを用いたさらなる研究により、赤身肉アレルギー患者由来のIgEと結合するα-Galを含有した赤身肉蛋白質が同定された。

■ これらの蛋白質のうちの4種類は加熱処理に対して安定であり、加熱処理された赤身中に蛋白質のアレルゲン性が保存されている事実を示している。

α‐Galエピトープは血液型B抗原と構造的に類似していることから、赤身肉アレルギー患者においてB型抗原陰性血液型との正の相関が認められた。

■ α‐Gal免疫反応の特異性を調べると、糖鎖部分に対する選択的なIgE反応性が観察された。

■ 赤身肉アレルギー患者由来のIgE抗体は、他の哺乳類の糖鎖である N-glycolylneuraminic acid (Neu5Gc)を認識せず、これも赤身肉に大量に存在する。

■ さらに、植物由来の共通のcross-reactive carbohydrate determinants (CCDs)も、これらの患者に対するIgE反応の標的ではない。

■ まとめると、α-Gal糖鎖は、食物アレルギーの診断において、考慮すべき可能性のあるアレルゲンであることが示されている。

■ 過去数年間に、赤身肉アレルギーの分野で多くの新しい知見が得られているが、α‐Galを含有した分子の消化、吸収、循環への輸送プロセスを理解するためには、さらなる研究が必要である。

 

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α-Galの興味深い関連性は、さらに研究が進んでいます。

■ 最近、α-Galは、セツキシマブという抗がん剤の可変部(Fab部分)にも存在することが判明しており、注意を要することがわかっています。

■ 赤身肉にアレルギーが有る場合に、セツキシマブを使う前に、病歴を聴取する必要があるわけですね。

■ さらに、牛肉、豚肉アレルギーとカレイの魚卵アレルギーの関連まで報告されるようになっていて、『意外な食物アレルギー』の常連(矛盾した表現ですが)になりつつあります。

■ アナフィラキシーの原因は、1割程度は最後までなかなかわからないことが報告されており、このような『特殊な例』が混じっている可能性がありますね。

 

今日のまとめ!

 ✅ 赤身肉に含まれるα-Galは、ダニ咬傷で増加し、B型の血液型で発症が阻害される、珍しいアレルギーである。

 

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