以下、論文紹介と解説です。

Sporik R, et al. Exposure to house-dust mite allergen (Der p I) and the development of asthma in childhood: a prospective study. New England journal of medicine 1990; 323:502-7.

1979年に59家庭から、1989年に65家庭からハウスダスト中のチリダニ量を測定し、1歳時のダニ曝露量と11歳での喘息発症リスクを検討した。

背景と方法

■ 喘息の小児は一般的に吸入アレルゲンに対する皮膚検査が陽性であり、英国では大多数の年長の喘息児がダニに感作されている。

■ 家族歴のためにアレルギー疾患のリスクがある英国の小児集団において、1978年から1989年まで室内チリダニアレルゲン(Der p I )への曝露と感作、喘息の発症との関係を前向きに調査した。

 

結果

■ 1989年に研究した小児67人のうち、35人はアレルギー(皮膚テスト陽性)で、32人は非アレルギーだった。

喘息に罹患している17人のうち、16人はアレルギー性(P<0.005)だった(全員が皮膚試験陽性および特異的IgE抗体価からチリダニへの感作を判断 [P<0.001])。

■ 1979年に小児59人の家庭から、そして1989年に65家庭から採取されたハウスダストからは、Der pIの曝露量としてハウスダスト1g当たりそれぞれ平均16.1および平均16.8μgだった。

1歳で曝露量が増加すると、11歳での感作の程度が上昇する傾向だった(P=0.062)

11歳の喘息児のうち一人を除く全員が、1歳時にハウスダスト1g当たり10μg以上のDer pIに暴露されており、喘息の相対リスクは4.8倍だった(P=0.05)

■ 喘鳴の最初のエピソードが生じた年齢は、全小児に対し1歳でのダニ曝露量と逆相関したが(P=0.015)、特にアレルギー性の児で相関した(r=−0.66、P=0.001)。

 

結論

■ 遺伝的要因に加えて、幼児期におけるチリダニのアレルゲンへの曝露量は、その後の喘息発症の重要な決定因子である。(N Engl J Med1990 (航空機);323:502–7。)

 

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環境整備と喘息の関連に関する研究の難しさはあるものの、この『ハウスダスト1gあたり10μg以上』という目安は今も使用されています。

■ NEJMとはいえ1990年の報告であり、症例数も思った以上に少ない報告です。

■ この報告以降、『ダニをへらすことで喘息が予防できるか』という研究が増えましたが、2008年のコクランシステマtジックレビューではその関連はあきらかにはなっていません(Cochrane Database Syst Rev 2008)。

■ メタアナリシス自体に『質の低い研究が混じっている』などの問題が指摘されています(Platts-Mills TAE.  J Allergy Clin Immunol 2008; 122:694-6.)。

■ しかし、最近のメタアナリシスも環境整備に否定的な結果となっており、結論は十分出ていないのが現状です。

■ 今のところ、『汚染された環境で』『十分、汚染原因を減らすことができれば』効果があるのではという考えに収束してきているようです。

 

今日のまとめ!

 ✅ 喘息の悪化因子としてのダニに関し、曝露量がハウスダスト1gあたり10μg以上を示した初期の報告をご紹介した。

 

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