以下、論文紹介と解説です。
Furuta T, et al. Exercise-induced allergic reactions on desensitization to wheat after rush oral immunotherapy. Allergy 2020. [Epub ahead of print]
小麦アレルギーのために『急速』経口免疫療法を実施され小麦製品の全量摂取(小麦蛋白 5g)を達成した21人に対し、運動負荷試験で陽性であった例と陰性であった例のその後2年間の経過を確認した。
背景
■ 小麦アレルギーに対する経口免疫療法(oral immunotherapy; OIT)の効果は脱感作を得る可能性の点で有望である。
■ しかし、脱感作中の運動誘発アレルギー反応(exercise‐induced allergic reactions on desensitization ;EARDS)の頻度や関連する危険因子は、いまだ確定されていない。
方法
■ 患者25人は、小麦アレルギーのために急速OITを実施され、21人は小麦製品の全量摂取を達成した(小麦蛋白 5g)。
■ 運動誘発試験を、小麦製品の全量摂取後に繰り返し行った。
■ 小麦抽出物、総グリアジン、脱アミド化グリアジン、組換えグリアジンコンポーネント(α/β-、γ-、ω1,2-、ω5-)およびグルテニンコンポーネント(高分子量/低分子量)に対する特異的IgE(sIgE抗体)の時間経過を、ImmunoCAP®、ELISA、IgEイムノブロッティングを用いて解析した。
結果
■ 14人(66.7%)はEIARDありと診断され、急速OITの実施5年後も11人(52.4%)は症状が残存した。
■ EIARDのある患者とEIARDのない患者の臨床背景に差はなかった。
■ しかし、EIARDのある患者は、EIARDのない患者よりも、OITを行う前のグリアジン・グルテニンコンポーネントに対するsIgE抗体価が有意に高かった。
■ 各コンポーネントに対するsIgE抗体価はOITの1年後、2年後に同じように低下した。
■ IgEイムノブロット法では、すべての患者の血清は複数のグルテンバンドに反応し、一部は水溶性バンドに反応した。
■ すべてのIgE反応性のバンドの反応性もOIT後には同じように低下した。
結論
■ EIARDsは頻繁に観察され、小麦アレルギーに対するOITが成功した後も長期間残存した。
■ 特定の小麦コンポーネントが、EIARDに寄与するとは示されなかった。
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経口免疫療法を行ったあとに脱感作を達成しても、その後運動して症状が誘発される場合がある。
■ この研究で確認された例は、すくなくとも週3回以上は摂取していたそうです。
■ 5歳以上12歳くらいまでの患者さんなので、特に運動量が大きい可能性はあります。
■ 脱感作されても運動負荷で症状がある場合、どのように対応するべきかは決まっていませんが…本文で、『中断すると脱感作も失われる可能性がある』と記載がありますので、やはり中断は推奨できないでしょう。
■ また、本研究の免疫療法の方法が急速免疫療法という特殊な方法であり、また、小麦特異的IgE抗体価が100を超えている状況からはじまっていることが条件を悪くしている可能性もあります。
■ これらからも、運動量が大きくなる前の早めの治療介入が必要だろう…と改めて考えました。
今日のまとめ!
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