以下、論文紹介と解説です。
Urashima M, et al. Primary Prevention of Cow's Milk Sensitization and Food Allergy by Avoiding Supplementation With Cow's Milk Formula at Birth: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr 2019. [Epub ahead of print]
乳児312人を、母乳栄養に加えた生後3日間のアミノ酸乳の負荷群と粉ミルク負荷群にランダム化し、2歳時点の乳への感作リスクを評価した。
重要
■ 牛乳を原料としたミルク(Cow's milk formula; CMF)は出生時の母乳栄養(breastfeeding; BF)を補うために用いられるが,そのプラクティスを支持する明確な臨床的エビデンスはない。
目的
■ 出生時にCMFの補充を避けることが、牛乳蛋白質および/または牛乳アレルギー(cow's milk allergy; CMA)を含む食物アレルギーに対する感作のリスクを減少できるかどうかを明らかにすることを目的とした(全体および25-hydroxyvitamin D (25[OH]D)で層別化したサブグループで層別化)。
試験デザイン、セッティング、参加者
■ ランダム化非盲検臨床試験であるAtopy Induced by Breastfeeding or Cow's Milk Formula(ABC)試験は、日本の単一の大学病院において、2013年10月1日に登録を開始し2018年5月31日に追跡調査を完了した。
■ 参加者にはアレルギーのリスクがある新生児330人が含まれた。このうち312件を解析対象とした。
■ データは2018年9月1日から10月31日まで解析した。
介入
■ 出生直後の新生児を、少なくとも生後3日間はアミノ酸ベースの成分乳(elemental formula;EF)を使用する(もしくは使用しない)群(BF/EF群)、または生後1日から生後5か月までCMF(5mL/日以上)を補充する群(BF+CMF群)にランダム化した(1:1)。
主要アウトカムと検査結果
■ プライマリエンドポイントは乳児の2歳の誕生日に、牛乳への感作だった(IgE抗体価が0.35アレルゲン単位[UA]/mL以上)。
■ セカンダリエンドポイントは、CMAを含む即時型もしくはアナフィラキシー型の食物アレルギーだった(経口食物負荷試験により診断、もしくは食物摂取により誘発され食物特異的IgE抗体価が少なくとも0.35 UA/mL)。
■ サブグループ解析は、生後5ヶ月における 血清25(OH)D lの三分位し、事前に特定した。
結果
■ 解析に含まれた乳児312人(男児160人[51.3%]、女児152人[48.7%])のうち、BF/EFおよびBF+CMF群の156人中151人(96.8%)が2歳の誕生日までフォローされた。
■ プライマリアウトカムは、BF±EF群の24名(16.8%)で生じ、BF+CMF群の46名の乳児(32.2%)より有意に少なかった(相対リスク[relative risk [RR],0.52; 95%CI 0.34-0.81)。
■ 25(OH)D(で層別化された)サブグループの三分位の中央群は介入と有意な相互作用を示した (RR 0.19; 95% CI 0.07-0.50; P=. 02)が、三分位の低値群、高値群は(相互作用を)示さなかった。
■ 2歳時の食物アレルギーの有病率は、即時型(4人[2.6%] vs 20人[13.2%]; RR, 0.20; 95%CI 0.07-0.57) およびアナフィラキシー型(1人[0.7%] vs 13人[8.6%]; RR, 0.08; 95%CI 0.01-0.58) であり、BF+CMF群よりBF±EF群で有意に低かった。
結論と関連
■ エビデンスは、牛乳に対する感作とCMA・アナフィラキシーを含む食物アレルギーは、少なくとも生後3日間はCMFの補充を避けることによって予防可能であることを示唆している。
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『早期離乳食開始』の時期に関して、方向性がついた卵・ピーナッツに比較して、乳に関しての取り扱いは明らかになっていない。
■ 『生後いつから離乳食を開始すると良いか?』という命題は、現状では卵とピーナッツしか明らかな研究結果があるとは言えません。
■ イメージ的には、下記のような感じです。つまり、EATスタディやPETITスタディにより、卵は生後3~6ヶ月、ピーナッツはLEAPスタディというランダム化比較試験により、方向性が付きました。
■ しかし、前半でお話したとおり、乳に関しては観察研究により生後14日~1ヶ月に開始をするといいのではないかと予想されていたのですが、今回の検討は生後3日以内からの乳の開始はむしろリスクになるかもしれないという結果になったと言えます。
■ この研究結果は、先行研究とはかなり方向性が異なるので、コメントすることが難しいのですが、開始時期のちがいと言えるかもしれません。
■ 私はこの研究にはまったく関わっていないのですが、この研究のグループの先生に直接きくことができました。
■ すると、『みての通りの結果で、最初はミルクを飲んだほうが予防に働くのかと想定していたが、逆の結果になった』というお話でした。
■ この研究デザインならば追試が今後行われるでしょう。そして正しいかどうかは、今後明らかになってくるのではないかと思っています。
■ 実際、この研究が行われた病院でも、まだ生後3日以内にアミノ酸乳を開始という方針には変わっていないようですし、慌てる必要性はないだろうと思います。
■ 個人的には、最初、粉ミルクを開始したのならば、そのまま『少量だけ』のんでおいてもいいかな…という考えです。
■ 実際に、そのアプローチで沖縄のハートライフ病院病院で、『Strategy for Prevention of milk Allergy by Daily ingestion of infant formula in Early infancy (SPADE) study』という研究が行われていると聞いています。
今日のまとめ!
✅ 生後3日以内の粉ミルク開始は、乳アレルギーのリスクになるかもしれない。