以下、論文紹介と解説です。

Chan S, et al. Treatment Effect of Omalizumab on Severe Pediatric Atopic Dermatitis: The ADAPT Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr 2019. [Epub ahead of print]

重症アトピー性皮膚炎(objective SCORAD 40以上)の4歳から19歳の小児に対しオマリズマブ(ゾレア)を24週間使用し、アトピー性皮膚炎が改善するかを検討した。

重要性

■ 小児の重症アトピー性皮膚炎に対する全身性治療のエビデンスは限られ、および/または認可されていない。

■ アレルギー疾患治療における抗IgE薬(オマリズマブ)は有鈎であるにもかかわらず、小児アトピー性皮膚炎における大規模ランダム化研究は発表されていない。

 

目的

■ 小児の重症アトピー性皮膚炎の治療におけるオマリズマブの有効性を確認すること。

 

試験デザイン、セッティング、参加者

Atopic Dermatitis Anti-IgE Pediatric Trial (ADAPT)は、24週間追跡した、単一施設における二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験(24週間)である。

■ 本試験は2014年11月20日から2017年8月31日まで、Guy's and St Thomas'Hospital(NHS財団Trust)およびKing's College London(in UK)で実施され、スクリーニング受診後に参加者が募集された。

適格参加者(62人)は4歳から19歳であり、最善の治療が有効でなかった重症アトピー性皮膚炎(objective Scoring Atopic Dermatitis[SCORAD] 40以上)を有していた

■ 統計解析はintention-to-treatにより行った。

 

介入

■ オマリズマブまたはプラセボを24週間皮下投与した。

■ ランダム化時に、総IgE(30~1500IU/mL)および体重(kg)に基いた用量を決定するために、製薬会社の投与表が用いられた。

 

主な結果と計測

■ 24週間の治療後のobjective SCORADインデックス。

 

結果

計62人の小児(平均年齢 [SD] 10.3歳 [4.2歳]; 男児 32人(52%))をオマリズマブ 30人またはプラセボ 32人のいずれかにランダム化した。

■ 参加者5名は治療から脱落した (プラセボ群 4例[13%]; オマリズマブ群 1例[3%])。

■ 追跡調査へは、24週で97%、48週で98%が参加した。

■ 試験開始時のobjective SCORADインデックス、年齢、IgE抗体価で調整した後、24週目におけるobjective SCORADインデックスの群間の改善の差の平均は −6.9(95% CI −12.2~−1.5; P=0.01)であった(オマリズマブ療法を有意に支持し、アトピー性皮膚炎の重症度における他の評価指標を反映した)。

■ Children's Dermatology Life Quality Index/Dermatology Life Quality Index(小児皮膚関連QOL指標)は −3.5 (95% CI −6.4~−0.5) およびPediatric Allergic Disease Quality of Life Questionnaire score(小児アレルギー疾患生活の質質問票スコア)は −0.5 (95% CI −0.9~−0.0)により測定したところ、オマリズマブ群でQOLスコアの改善が認められた。

オマリズマブ群ではプラセボ群と比較して強力なステロイド外用薬のが少なかったにもかかわらず、疾患重症度は改善した(体表面積に占める湿疹の割合の中央値が16% [四分位範囲 (IQR)10%-46%] vs 31% [IQR 14%-55%]; ステロイド外用薬使用日数の中央値109日 [IQR 34~164] vs 161日[IQR 82-171])。

 

結論と関連性

■ このランダム化臨床試験は、オマリズマブがアトピー性皮膚炎の重症度を有意に低下させ、試験開始時の総IgE抗体価の上昇が高いにもかかわらず、アレルギー体質と重症アトピー性皮膚炎のある小児におけるQOLを改善することを見出した。

■ この結果は強力なステロイド外用薬を減量する効果と関連しており、オマリズマブがアレルギー体質の小児における管理困難な重症アトピー性皮膚炎に対する治療選択肢であることを示唆する。

 

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オマリズマブ(ゾレア)は、小児アトピー性皮膚炎に有効かもしれない。

■ ゾレアに関して当科ではいまだに採用されていないので、使用経験が少なくのですが、6歳以上の小児の『重症喘息』に保険適用です。

■ インタビューフォームに『6歳以上の小児気管支喘息患者を対象とした臨床試験において、頭痛、発熱、上腹部痛が多く認められている』とあり、すこし懸念はあるものの、重症アトピー性皮膚炎に対する治療選択肢として期待されます。

■ 高価であり、注射製剤であることはやはり考慮すべきではありますが…

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 小児の重症アトピー性皮膚炎に、オマリズマブが有効かもしれない。

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