以下、論文紹介と解説です。

Brough HA, et al. Defining challenge-proven coexistent nut and sesame seed allergy: A prospective multicenter European study. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2019.. [Epub ahead of print]

少なくとも1種類のナッツまたはゴマアレルギーが確認された0歳から16歳の小児に対し、負荷試験を実施して交差抗原性を検討した。

背景

■ ピーナッツ、ナッツ類、ゴマのアレルギーは、生命を脅かす食物依存性アレルギー反応のおもな原因である。

■ これらの食物に共存するアレルギーの割合は主に、限られた種類のナッツ類に対してか、経口食物負荷試験に基づいていないレトロスペクティブ研究から得られている。

 

目的

■ Pronuts研究は、ピーナッツ、ナッツ類、および/またはゴマアレルギーの、負荷試験により証明された併存率を評価する欧州多施設研究(ロンドン、ジュネーブ、バレンシア)である。

 

方法

■ 少なくとも1種類のナッツまたはゴマアレルギーが確認された0歳から16歳の小児は、他の全てのナッツおよびゴマに対する診断を目的とした食物負荷試験を受けた。

管理人注
プリックテストは、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、カシュー、ピスタチオ、ペカンナッツ、ブラジルナッツ、マカダミアナッツ、パインナッツ、クルミ、ごまペーストで実施されています。

 

結果

■ 全体として、ピーナッツ、ナッツ類、ゴマアレルギーの併存率は60.7%(122人中74人; 95% CI 51.4%~69.4%)だった。

ピーナッツアレルギーはロンドンで多く、カシューナッツとピスタチオナッツアレルギーはジュネーブで多く、クルミとペカンアレルギーはバレンシアで多かった

カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンナッツ、クルミ・ペカンナッツ・ヘーゼルナッツ・マカダミア間に、強い相関関係があった

■ 年齢(生後36か月以上)と施設(バレンシア>ジュネーヴ>ロンドン)は、ナッツアレルギーの併存率の高さと関連していた。

本報告のグラフィカルアブストラクト。国によってナッツ類のアレルギー率は異なり、ナッツ類ごとの相関関係がある。

■ 他のナッツに対する耐性を示す診断プロトコルを実行することにより、参加者は中央値9種類のナッツを導入することができた

 

結論

■ 先行研究よりも、ナッツやゴマアレルギーの併存率が高いことを見出した。

■ 食物負荷試験は労働集約的であり重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があるが、食事制限は緩和された。

■ 年齢は複数のナッツアレルギーの有意な予測因子であるため、ナッツアレルギーの二次的な拡大は、より年長の小児で生じた。

 

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この検討から得られた交差抗原性の表は、今後ながくつかわれるものになりそうです。

■ ナッツ類を全体として考えると6割はなにかと交差するものの、負荷試験を丁寧に実施すれば最終的にはほとんどのナッツ類が食べられるのではないかと言えます。

■ しかし、負荷試験はマンパワーも要する上にリスクもあり、なかなかすべてを実施することは難しく、交差抗原性を評価しながら効率的に実施する必要性もあるでしょう。

■ この検討からの交差抗原性の表は、今後ながく使われるものになりそうです。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、カシュー、ピスタチオ、ペカンナッツ、ブラジルナッツ、マカダミアナッツ、パインナッツ、クルミ、ごまに関する、前向きに登録された児に対する負荷試験で検討された交差抗原性が発表された。

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