以下、論文紹介と解説です。
Itazawa T, et al. The severity of reaction after food challenges depends on the indication: A prospective multicenter study.Pediatr Allergy Immunol. 2020; 31:167-74.
日本の多施設において実施された、前向きの食物経口負荷試験の症例集積研究を実施し、計5062症例(年齢中央値3.8歳)に関する結果を分析した。
背景
■ 経口食物負荷試験(oral food challenge; OFC)の適応は拡大している。
■ OFCのリスクを検討している研究もあるが、適応に応じたOFC中のアレルギー反応についてはほとんど報告されていない。
■ そこで、OFCの適応に応じたアレルギー反応の有病率、重症度、治療を評価した。
方法
■ 2012年3月から2013年5月に前向き多施設研究を実施した。
■ OFCにより誘発された症状の重症度は、グレード1(最も軽い)からグレード5(最も重い)という、アナフィラキシーのグレードに従って分類された。
結果
■ 計5062症例(年齢中央値3.8歳;男児65.2%)を解析した。
■ アレルギー反応は2258例(44.6%)で誘発され、そのうち991例(43.9%)はグレード1、736例(32.6%)がグレード2、,340例(15.1%)はグレード3、191例(8.5%)がグレード4‐5に分類された。
■ アドレナリンはOFC陽性例の7.1%(160例)に投与された。
■ 最も多く見られた上位三種類の食物アレルゲン(鶏卵、牛乳、小麦)の中で、重症度はOFCに対する適応に依存し有意に異なり、調整した検標準化残差は、経口免疫療法に対する閾値を評価するというOFCの適応例では、アレルギー反応の重症度がより高いことを示した。
■ また、安全摂取閾値の決定するためのOFCは、アドレナリン使用するアレルギー反応の誘発率が最も高かった。
結論
■ 本研究は、OFCの適応に依存して、アレルギー反応の誘発率・重症度・治療が異なることを示唆した。
■ OFCの適応に依存したリスクの違いを決定するために更なる研究が必要である。
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食物経口負荷試験は、リスクが低いわけではない。
■ あくまでも、重篤な症例があつまる病院での症例集積ではありますが、食物経口負荷試験はリスクのある検査ですので、十分な対応ができる状況で行う必要性があります。
■ 食物にたいする免疫療法は、重篤な食物アレルギーに対する治療ですから重篤なアレルギー反応はでるリスクはどうしても高くなるでしょうし、安全に食べられる閾値を調べる(症状がでるまで増量負荷する)場合にはアドレナリン(アナフィラキシー時に使用されます)が使用される率が高いということになります。
■ リスクを鑑みながら、体制を整えられる時期に行う検査とも言えましょう。
■ 現在はコロナ禍の影響もあり、多くの病院で負荷試験を見合わせていると考えられますが、致し方ない部分もあるかと思われます。
今日のまとめ!
✅ 食物経口負荷試験の目的は多様化しており、その目的によって負荷試験のリスクも変化する。