以下、論文紹介と解説です。

Roberge RJ, Kim J-H, Benson SM. Absence of consequential changes in physiological, thermal and subjective responses from wearing a surgical mask. Respiratory physiology & neurobiology 2012; 181:29-35.

成人20人に対し、時速5.6km/hで1時間トレッドミル運動を実施し、サージカルマスクの有無での生理的指標の変動を比較した。

■ 20人の被験者は、心拍数、呼吸数、酸素飽和度、経皮的二酸化炭素、SpO2、体部中心と皮膚温、マスクのデッドスペースの温度と相対湿度、マスクの下の皮膚温度をモニターしながら、サージカルマスクを装着している場合と装着していない場合における、時速5.6km/hで1時間トレッドミル運動を実施した。

■ 評価尺度は、労作度と暑さの感覚を適用した。

サージカルマスクの使用により、心拍数(9.5回/分;p<0.001)、呼吸数(1.6回/分;p=0.02)、経皮二酸化炭素濃度(2.17mmHg;p=0.0006)が増加し、覆っていない顔の皮膚温は低下した(0.40℃;p=0.03)

■ マスクで覆われた皮膚温度が1.76℃上昇することは、マスクのデッドスペースにおける見掛けの熱指数52.9℃と関連していた。

■ 暑さの感覚は変わらない~わずかに暑い程度であり、労作については非常に軽いからかなり軽いまでの範囲だった。

軽い~中等度の作業でサージカルマスクを1時間使用しても、臨床的に有意な生理的影響、労作や暑さに対する有意な主観的感覚とは関連していなかった

1時間の低~中程度の作業であれば、サージカルマスクを使用しても体部中心温度の平均は有意に上昇しなかった(<0.1℃)

 

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マスクで体温が上るという報告もあり、熱中症のリスクへの配慮は必要。ただし、軽度~中等度の運動で配慮すれば、影響は軽微といえそうだ。

■ ここであげた『マスク』は、一般的な『サージカルマスク』を指しますので、N95マスクではないことに留意が必要です。

■ そして、たしかにマスクが体温の上昇もあるという報告もあり、この報告でも、マスクにより顔の温度などはあがるようです。そういう意味では熱中症のリスクはある程度あがる可能性はあります。ただ、その影響は限定的と言えそうです。

■ そして通気性の良いマスクは、その有効性とのトレードオフかもしれない(Annals of Occupational Hygiene 2011; 56:102-12.)というレビューもあります。

熱中症にならないように、水分摂取を励行して日陰に退避するという、熱中症予防の基本をおさえておくことを励行することのほうが大事な気がしてきました

 

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今日のまとめ!

 ✅ マスクで体温が上るという報告もあり、熱中症のリスクへの配慮は必要。ただし、軽度~中等度の運動で配慮すれば、影響は軽微といえそう。

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