以下、論文紹介と解説です。
Patel NA. Pediatric COVID-19: Systematic review of the literature. American Journal of Otolaryngology 2020:102573.
小児のCOVID-19の疫学について検討するために、症例シリーズ2件と後方視的なカルテレビュー8件を含む計10件の研究(COVID-19患児 計2914人)のシステマティックレビューを行った。
目的
■ 小児における SARS-CoV-2 感染の、人口統計学・臨床的特徴に関するデータは限られている。
■ そして、肺炎は世界の小児の死亡原因の主要なひとつであるため,この情報は特に重要である。
■ このシステマティックレビューは,COVID-19 が小児に及ぼす世界的な影響についての理解を深めることを目的とした。
方法
■ 小児のCOVID-19の疫学についての洞察を得るために、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従って文献のシステマティックレビューを実施した。
■ 具体的には、PubmedとGoogle Scholarデータベースを検索し、Pediatric Covid 19、Pediatric Covid-19、Pediatric SARS-COV-2、Pediatric Coronavirus 19に焦点をあて関連論文を特定し、対象となった論文の中の参考文献をレビューした。
■ 人口統計学、臨床、検査、放射線学、治療、転帰のデータを分析した基準を満たしたすべての論文を対象とした。
結果
■ このシステマティックレビューには、症例シリーズ2件と後方視的なカルテレビュー8件を含む計10件の研究(COVID-19患児 計2914人)が含まれた。
■ データが得られた患者のうち、男児56%で、年齢は生後1日~17歳、合併疾患がないものが79%であり、合併疾患があった21%のうち、最も多かったのは喘息、免疫抑制、心血管疾患だった。
■ SARS-CoV-2 感染症の検査を受け陽性となった小児のうち、無症状の患者は 14.9%だった。
■ 患者は上気道症状・鼻漏・くしゃみ・鼻閉(13.7%)、嘔吐・嘔気(7.8%)、下痢(10.1%)よりも、咳(48%)、発熱(47%)、咽頭痛・咽頭炎(28.6%)をより多く呈した。
■ 白血球数、リンパ球数、CRPを含む臨床検査値の中央値は基準範囲内だったが、プロカルシトニン値はCOVID-19患児でわずかに上昇した(プロカルシトニン値の中央値は0.07~0.5ng/mL)。
■ コンピュータ断層撮影(Computed tomography; CT)の結果から、COVID-19患児では、片側性のCT画像所見が36%の症例で認められ、64%が両側性の所見を認めた。
■ 年齢別の入院データがある研究のうち、入院した患者の27.0%は1歳未満の乳児だった。
■ 小児を対象にインターフェロン、抗ウイルス薬、ヒドロキシクロロキンなどの様々な治療法が試みられているが、現在のところ、有効な治療法の研究結果はない。
■ COVID-19で入院した小児の死亡率は0.0018%だった。
結論
■ 成人とは対照的に、感染した小児の大多数は軽快し、全体的に良好な転帰を示しているようである。
■ 合併症のある小児や低年齢児には、追加のケアが必要かもしれない。
■ このレビューでは、COVID-19患児の36.4%に片側性のCT胸部画像所見が認められたことも示唆されている。
■ 咳嗽のある小児患者のワークアップでは、気道異物の有無を評価するために気管支鏡検査が必要となる可能性があるため、このことは特に懸念される。
■ エアロゾル化はウイルス感染の方法である可能性があるため、これらの症例では個人用防護具を使用して特別な注意を払う必要がある。
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小児のCOVID-19の報告の多くは、比較的軽症が多く死亡率が低いことを示しているものが多い。
■ 今更ですが、やはり小児におけるCOVID-19の症状は比較的軽く、死亡率が低いといえます。
■ もちろん、死亡者がいないという意味でも、重症化しないという意味でもありません。
■ あくまで、こういった情報を事前にもつことで、予測をしていく必要性があるということです。
■ また、CT所見が片側である場合も少なからずあることは念頭に置いておく必要性があるようです。
今日のまとめ!
✅ 小児の新型コロナウイルス感染症の多くは軽症で死亡率も低いが、CTにおける所見が片側であるケースも少なからずある。