以下、論文紹介と解説です。
Stratta P, Badino G. Scombroid poisoning. CMAJ 2012; 184:674-.
スカムロイド中毒(サバ中毒=魚によるヒスタミン中毒)に関する総論。
スカムロイド中毒(サバ中毒)は、魚摂取に関連した食中毒の一般的な型である。
■ スカムロイド中毒は、不適切な加工や保存によりヒスタミン濃度の高い生魚、缶詰、燻製を摂取した後に起こる。
■ 最初は、マグロやサバなどのScombroidea(サバ)亜目の魚に関連して記述されたが、その後、他の青身魚(イワシやカタクチイワシなど)と関連して記述されるようになった。
■ スカムロイド中毒は、魚の摂取に関連した病的状態の最も一般的な原因の1つである。
スカムロイド中毒はアレルギーではない。
■ アレルギー反応は通常、関与した食物に対するアレルギーの既往歴がある1人の人に影響する。
■ しかし、(スカムロイド中毒は)魚の筋肉内のヒスチジンの脱炭酸によって生成されるヒスタミンが、この症状の主な原因である。
■ 脱炭酸過程は、主に魚の上皮や腸内でみつかる腸性グラム陰性菌(例えば、 Morganella morganii、大腸菌、クレブシエラ種、緑膿菌)によって産生される酵素によって誘導される。
症状はヒスタミン中毒のそれである。
■ スカムロイド中毒の症状としては、顔面紅潮、発疹、蕁麻疹(一般的に広範囲の紅斑、通常は喘鳴はない)、動悸、頭痛、めまい、発汗、口や喉の灼熱感などがある。
■ 消化器症状としては、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などがある。
■ 気管支痙攣、呼吸窮迫、血管拡張性ショックも報告されている。
■ 症状は、関連する魚を食べてから10分から90分以内に始まる。
■ 発疹は2~5時間持続し、その他の症状は通常3~36時間以内に軽快する。
■ 診断は臨床的に行われることが多く、原因となる腐敗した食品中のヒスタミンの測定によって確認することができる。
■ 血漿中の患者のヒスタミンレベルや尿中のヒスタミン代謝物(例えば、N-メチルヒスタミン)の測定も、診断を支持することが可能である。
ヒスタミンは影響を受けた魚の臭いや見た目を変えない
■ スカムロイド中毒は誤診が多い。
■ ヒスタミンは感覚刺激に影響しないので、魚は正常に見えるかもしれない。
■ しかし、上昇したヒスタミン量は、処理する前の不適切な冷凍や調理後の室温にあった魚に起因して発生する可能性がある。
■ したがって、魚の外観、味、においは、ヒスタミンの存在として指針とならない。
■ ヒスタミンは熱に安定しており、調理、冷凍、缶詰、燻製の後でも存在する。
■ 発生は夏に最もよく見られる。
治療には抗ヒスタミン薬と支持療法がある。
■ スカムロイド中毒のほとんどの症例は、self-limited(治療をしないでも長期的には症状が落ち着いたり治まる性質)である。
■ しかし、患者が治療を必要とするほど重篤な症状を呈している場合には、症状に合わせた支持療法とともに、抗ヒスタミン薬(通常はH1受容体拮抗薬)が一般的に使用される。
■ アドレナリンやステロイドは一般的には適応外である。
■ 中毒のさらなる事例を防ぐために、公衆衛生当局に通知して原因を調査し、関与した製品を流通から排除すべきである。
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Scombroid poisoning以外にも、『シガテラ中毒』なども誤診されやすい病態になるでしょう。
■ 魚アレルギーは、おもにパルブアルブミンという水溶性のたんぱく質により発症し、それぞれの魚に構造をすこしずつ違えて存在するため、1種類だけの魚で発症することはすくなく一般的に複数の魚で発症します。
■ また、パルブアルブミンは白身魚のほうが一般的に多く含有されるので、『青身魚のみ』の発症という場合は『魚アレルギーではないかも…』という予想が立てられます(他にはアニサキスによるものなど)。
※インスタでの説明をリンクします。
■ また、Scombroid poisoning以外にも、『シガテラ中毒』なども誤診されやすい病態としてよく挙げられます。
■ 東京では流通の関係であまりみられないのですが、沖縄では比較的多いようです。
■ シガテラ中毒は、食物連鎖の最後のあたりの大型魚に含まれたシガトキシンを摂取した後の消化器系、循環器系、神経系温度感覚異常を起こす病態で、『ドライアイスセンセーション』という冷たいものに触れた時に電気刺激のような痛みを感じたりするという特徴があります。
今日のまとめ!
✅ 『魚アレルギーに間違われやすい病態』として、Scombroid poisoningやシガテラ中毒をご紹介した。