以下、論文紹介と解説です。
Xie G, et al. The role of peripheral blood eosinophil counts in COVID-19 patients. Allergy 2000; https://doi.org/10.1111/all.14465
上海総合病院の発熱クリニックを受診した肺炎患者 227 例と、上海市公衆衛生臨床センターに入院した COVID-19 患者 97 例を対照に、COVID-19の経過と好酸球数の関連があるかを、後方視的に検討した。
背景
■ 武漢市での新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019; COVID-19)が出現し、中国以外の地域でも、世界中に急速に広がっている。
■ COVID-19の患者の診断・評価の効率化を図るため、経過のマーカーとして末梢血好酸球(blood eosinophil; EOS)の役割を検討することを目的とした。
方法
■ 上海総合病院の発熱クリニックを受診した肺炎患者 227 例と、上海市公衆衛生臨床センターに入院した COVID-19 患者 97 例を対象に、後方視的な研究を行った。
■ 臨床データ、検査データ、放射線学的データを収集した。
■ COVID-19の患者におけるEOSの傾向と重症度を、さまざまな患者を比較しまとめた。
研究結果
■ COVID-19の患者の多く(71.7%)では末梢血EOS数の減少がみられ、他のタイプの肺炎患者と比較して有意に高頻度だった。
■ EOS数は、COVID-19の予測に良好な意義を示唆し、NLR(neutrophil-to-lymphocyte ratio)と組み合わせることでさらに高くなった。
■ 入院時のEOS数が低かった患者は、EOS数が正常な患者に比べて発熱、倦怠感、息切れが多く、胸部CTやX線写真の増悪が多く、入院期間や病状の経過が長くなった。
■ 末梢血EOSは時間の経過とともに徐々に上昇し、胸部CTの改善(12日 vs 13日;P=0.07)と同期し、体温(12日 vs 10日;P=0.014)よりも遅く,PCR検査の陰性化(12日 vs 17日; P=0.001)よりも早くなっていた。
結論
■ 末梢血EOS数は、COVID-19の患者の診断、評価、予後モニタリングにおいて有効かつ効率的な指標となる可能性がある。
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好酸球数は、感染症時には下がることが一般的ではあるものの、経過を予測するひとつの指標になるかもしれない。
■ discussionでは、『骨髄での好中球の生成が促進され、末梢血の好中球が肺に大量にリクルートされているのではないか』と考察されていました。すなわち、『好中球の産生へシフトすることで、好酸球の産生が減少するのではないか』ということです。
■ とはいえ、この減少は他の感染症でもみられます。ですので、『その程度が強い』ということなのでしょう。
■ 末梢血好酸球数は、クリニックでも可能な検査ですし、有用かもしれませんね。
今日のまとめ!
✅ COVID-19では、末梢血好酸球数が経過や重症度の予測に有用かもしれない。