以下、論文紹介と解説です。
Sugiura S, et al. Slow low-dose oral immunotherapy: Threshold and immunological change. Allergol Int 2020.
鶏卵 133人(蛋白質としての累積投与量983mgまで)、牛乳 50人(287mgまで)、小麦 45人(226mgまで)までで症状があった食物アレルギー児に対し、1年間微量摂取することで、その量をクリアできるようになったかを確認した。
背景
■ 卵、乳、小麦アレルギーに対する低用量経口免疫療法(slow low-dose oral immunotherapy; SLOIT)の実施可能性、有効性、安全性を重症度で層別化した初期用量と維持用量を設定し、検討した。
方法
■ 鶏卵 133人(蛋白質累積摂取量983mgまで)、牛乳 50人(287mgまで)、小麦 45人(226mgまで)の低用量経口食物負荷試験(low-dose oral food challenge; LD-OFC)で定義された食物アレルギー児がリクルートされた。
論文から引用。食物負荷試験の重症度スコアから考えた、免疫療法の初期用量。
■ 参加者は、希望に基づいて2群に分けられた[SLOIT群と対照群(完全除去)]。
■ SLOITを選択した参加者は、1年間で10回の増量を目標に、安全な用量を毎日摂取し、毎月増量するよう指示された。
■ プライマリアウトカムは、1年間の治療後にLD-OFCをパスした参加者の率だった。
結果
■ SLOIT群は、1日平均で抗原を92.9%摂取していた。
■ LD-OFCをパスした参加者の率は、SLOIT群で35.9%(170人中61人)、対照群で8.7%(46人中4人)だった(P < 0.001)。
■ それぞれのアレルゲンに有意な差は認められなかった。
■ LD-OFCにパスしなかった参加者は、LD-OFCにおける総摂取量の変化の中央値は、SLOIT群で235%(四分位範囲 100%~512%)、対照群では100%(42%~235%)だった(P<0.001)。
■ アレルギー誘発症状が観察されたのは、計画された摂取量あたり0.58%(48486回中280回)のみであり、SLOIT群の約50%の参加者には治療期間中、明らかなアレルギー症状は観察されなかった。
結論
■ SLOITは、有意な実現可能性、有効性、安全性が示唆され、重症の食物アレルギー患者をマネージメントするための有望な選択肢を提供する。
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食物アレルギーのために微量摂取できなかった場合でも、さらに少ない量を1年間継続すると、(最初摂取できなかった)微量の食物が摂取できるようになる可能性がある。
■ ランダム化比較試験ではありませんが、この微量経口免疫療法の利点は『安全性』といえましょう。
■ すこしでも食べられるようになれば、普段の生活のリスクが大幅に低減するので、方法としては重要な選択肢にはなるでしょう。
■ ただし、あくまで『微量食べられなかった人』が、1年間食べ続けることで35%程度、『微量がたべられるようになる』ということも、考慮に入れる必要性はあります。
■ また、この研究ではASCAスコアという方法が使われています。
■ ASCAスコアというのは、摂取した蛋白量と重症度のふたつの要素を考え合わせた、食物アレルギーの重症度をスコア化したものです。
■ ASCAスコアは考え方としてはとても納得でき、有用です。ただし、日本の一部の施設しか使われていないためになかなか世界的に使えるものにならないことが問題点として指摘できます。
今日のまとめ!
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