以下、論文紹介と解説です。

Sinai T, et al. Reduced Final Height and Inadequate Nutritional Intake in Cow's Milk-Allergic Young Adults. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2019; 7:509-15.

青年期のIgE依存性牛乳アレルギー患児87人において、食物アレルギーのない対照者 36人と比較して身長や体重、栄養の充足度の違いを検討した。

背景

■ 牛乳アレルギー児における成長障害は先行研究で報告されているが、成人における最終身長到達時においては検討されていなかった。

 

目的

■ 青年期のIgE依存性牛乳アレルギー(IgE-mediated cow's milk allergy; IgE-CMA)患者の食事摂取量と最終身長を、アレルギーのない対照者と比較して調査した。

 

方法

■ IgE-CMA患者87人(年齢の中央値19.5歳(四分位範囲 [interquartile range; IQR] 17.3-22.7)と、食物アレルギーのない対照者 36人(年齢中央値22.7歳 [IQR 18.9-26.1])を調査した。

■ 体格および栄養データを収集した。

■ 年齢と性別スコアは、CDCの成長チャートに従って決定された。

■ 栄養摂取量の評価は、食事記録に基づいた。

■ 喘息以外の骨代謝や成長に影響を及ぼす疾患や治療を受けている場合は除外した。

 

結果

身長のzスコアの平均値は、対照群と比較してCMA患者では有意に低かった(-0.64±0.9 vs -0.04±0.7; P = 0.001)

■ 対照的に、体重やBMIスコアについては、2群間の差は認められなかった。

CMA患者では、タンパク質、いくつかの必須ビタミン(A、B12、リボフラビン)、ミネラル(カルシウム、カリウム、リン、マグネシウム、亜鉛)の摂取量が対照群と比較して有意に少なかった(<0.05)が、カロリー、炭水化物、脂肪の摂取量は2群間での有意差は認められなかった。

■ 実際の身長と期待される身長(親の身長に基づく)における身長のスコア差は、喘息の有無やその他の食物アレルギーの有無にかかわらず、CMA対象者にみられた。

 

結論

■ 乳児期からCMAを有する若年成人は、予想される成長に達しないリスクがある。

■ これらのリスクのある患者では、成長と栄養のモニタリング、そして適切な食事介入が特に重要である。

 

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乳アレルギーは、除去により最終身長に影響する可能性があり、低アレルゲンミルクの早期導入や栄養への配慮が必要と思われる。

■ この研究はあくまで横断研究の結果ではあるので結論を急ぐのは早いのですが、乳アレルギーのあるお子さんに対しての対応として、除去だけでなく栄養的な配慮がはやめに必要になることを示しています。

■ すでに先行研究で、母乳のみでは、徐々に栄養障害を来す場合があり、例えば、多品目の除去は有意に低身長を来すことも示されています(柳田紀之他,日小ア誌2013;27:721-724)。

■ そこで個人的には、乳アレルギーのお子さんには早めに低アレルゲンミルクの導入を考えるようにしています。加工品(ビスケットなど)では、栄養への配慮が不十分になりがちなのではと考えるからです。

■ また、低アレルゲンミルクの早期の導入は、その後の乳アレルギーの改善にも有効であることも報告されています

■ もちろん、低アレルゲンミルクは味の問題もあり、なかなか難しい場合もあるので、『どうしても飲めない』はもちろんあるでしょう。

■ そういった場合は、栄養士さんの力をかりて他の栄養バランスなどにも配慮しつつ、アレルギーの予後だけでない子どもたちの成長にも配慮が必要ということだと思われます。

 

 

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今日のまとめ!

 ✅ 乳アレルギーは、除去により最終身長に影響する可能性があり、栄養への配慮が必要と思われる。

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