以下、論文紹介と解説です。

Abrams EM, et al. Milk allergy most burdensome in multi-food allergic children. Pediatric Allergy and Immunology 2020.[Epub ahead of print]

乳アレルギーを含む複数の食物アレルギーを持つて64人(男児69.8%)に関し、その負担に関してアンケート調査を実施した。

背景

■ 食物アレルギーは、子どもたちに大きな影響を与え、健康的な負荷につながる。

■ 食物アレルギーを持つ子どものうち、70%は複数の食物アレルギーを持っている。

■ 食物アレルギーが生活の質に及ぼす全体的な負担については先行研究があるものの、個々のアレルゲンにおける負担に関してはほとんど報告がなかった。

■ 本研究では、複数の食物アレルギーをもつ児の家族の負担感について検討することを目的とした。

 

方法

■ 牛乳を含む複数の食物アレルギーを持つ児の親は、食物アレルギーに関連した時間的な負担、経済的コスト、社会的制約、精神的要求について、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの両方を含むオンラインアンケートに回答した。

 

結果

■ 全体として64人(男児69.8%)が研究に含まれており、そのうち73.0%が10歳以下だった。

■ ほとんどが乳児期に食物アレルギーと診断され、(小児)アレルギー専門医によって診断されていた。

■ その他、ピーナッツ(65.6%)、ナッツ類(57.8%)、卵(76.6%)、ゴマ(31.3%)などが多く見られるアレルギーだった。

定量的には、牛乳アレルギーが最も負担が大きいと報告され、最も社会的に制限され(81.5%)、最もプランニングをする必要があり(75.9%)、最も不安を感じ(68.5%)、「安全な」食品やアレルギーに親切な食品を見つけるのが最も困難で(72.2%)、費用がかかる(81.5%)などが挙げられた

■ 質的には、コストの負担、乳製品の子どもへのマーケティング、コンタミネーションのリスク、牛乳・乳製品の偏在性、乳糖不耐症のもつ世間の混乱、アレルギーに対応するための他の人の意欲のなさといった5つのテーマを特定した。

※抄録がややわかりにくいので、本文のTableの一部を翻訳
1. 代替のカルシウムやエネルギーが多い食べ物を見つけることは困難で、コストがかかる
2. 乳製品は子供向けに販売されていることが多い
3.液体やこぼれた乳によるコンタミネーションのリスク
4. 牛乳はどこにでもあり、しばしば乳糖不耐症と混同されたり、ピーナッツやナッツアレルギーと同等の深刻さとして認識されていない。
5. 受容を望まない他の人

 

結論

■ 子どもが牛乳を含む複数の食物アレルギーを持っている親は、時間的、経済的、社会的、感情的負担に関連するアレルギーとして牛乳がもっとも大きいと報告した。

 

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乳アレルギーの治療は、コンタミネーションや誤食のリスク、そして治療の困難さも含め、ナッツ以上の負担感があるといえるかもしれない。

■ 食物アレルギーの負担感をアレルゲンごとに優劣を決めることに意味があるかどうかはわかりません。

■ ただ、外来で診療していても、乳アレルギーは、コンタミネーションや誤食のリスク、そして治療の困難さなども含め、難しい相手であることを感じます。

『わずかでも』乳が飲めるようになると、リスクも負担も大きく減ることもよく感じることでもあり、なんとか治療をすすめることを工夫していますが、どのように治療をすすめていくかは、悩むことも多い相手とも言えます

■ そして乳が食べられるようになり、『お菓子を食べたよ!』というお子さんの笑顔を見ることは我々にとっても嬉しいことです。

■ 昨日もお話しましたが、年齢が低いうちに低アレルゲンミルクを導入するかどうかを視野に入れつつ、まだまだ悩みつつ治療にあたる必要性があると考えています。

■ なんとか、安全に少量でも導入できるような研究や発症予防研究が進むことが望まれます。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 食物アレルギーの中でも乳アレルギーは、負担が大きくなりがちなのかもしれず、より丁寧な対応が必要と思われる。

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