以下、論文紹介と解説です。

Willame C, et al. Systematic Review and Meta-analysis of Postlicensure Observational Studies on Human Papillomavirus Vaccination and Autoimmune and Other Rare Adverse Events. Pediatr Infect Dis J 2020; 39:287-93.

HPV ワクチン接種後の安全性に関する研究をレビューし、自己免疫疾患やその他の希少疾患のリスクを検討した22研究のメタアナリシスを実施した。

背景

■ 許可前試験の被験者数が限られているため、ワクチンの自己免疫疾患やその他のまれな有害事象が検出されないことはありうる。

■ 2006年以降、何百万ものヒトパピローマウイルス(human papillomavirus; HPV)ワクチンは流通しており、かなりの量の許可後の安全性データが生み出された。

■ 本研究の目的は、HPV ワクチン接種後の安全性に関する研究をレビューし、自己免疫疾患やその他の希少疾患のリスクの推定値をまとめることである。

 

方法

■ このシステマティックレビューとメタアナリシスのために、2019 年 4 月 16 日までに実施された研究に関しデータベースを検索し、HPV ワクチン接種と自己免疫性疾患の有害事象に関連する許可後の安全性を調査した研究ををすべて特定した。

■ プールされたリスクの推定値は、疾患ごともしくは HPV ワクチンごとに少なくとも 2 つの推定値が得られた場合に、固定効果モデルまたはランダム効果モデルを使用して計算した。

 

結果

■ 22件の研究が包含基準を満たした。

■ これらの研究では、さまざまな方法が適用されており、さまざまな種類のデータソースとアウトカムの定義が使用されていた。

4価HPVワクチン(Quadrivalent HPV vaccine; 4vHPV)が最も一般的に評価されていた。

■ 1型糖尿病、血小板減少性紫斑病、甲状腺炎疾患が最も多く報告された。

■ プールされた48のリスク推定値に対応する35疾患を対象に、メタアナリシスが実施された。

■ プールされた推定値の多くは有意な影響を示さなかった(n = 43)。

3種類の病態(麻痺、免疫性血小板減少性紫斑病、慢性疲労症候群)に関しては保護的な効果、2種類の病態(橋本病、レイノー病)との正の関連性が検出された。

論文より引用。HPVワクチンは、麻痺、免疫性血小板減少性紫斑病、慢性疲労症候群に関してはむしろ保護的な効果が観られた。
一方、橋本病、レイノー病はリスクが増加する可能性が示された。

 

結論

■ この研究では、HPVワクチンと自己免疫疾患やその他の希少疾患に明確な関連性がないことが示された。

■ このレビューはまた、まれな安全性の有害事象を監視するために、より体系的な共同研究の必要性を強調する。

 

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HPVワクチンの有害事象に関するメタアナリシスにおいて、麻痺や慢性疲労症候群に関してはむしろ少なくなる可能性が示唆された。

■ HPVワクチンに関するメタアナリシスにおいて、麻痺や慢性疲労症候群に関してはむしろ保護的な効果がみられるという結果でした。

■ 橋本病に関しては、Chaoらの研究(Chao C, J Intern Med. 2012;271:193–203)、レイノー病に関してはArnheim-Dahlströmらの研究(Arnheim-Dahlström L, BMJ. 2013;347:f5906.)が大きな影響を及ぼしていたとしています。

■ 全体としては、HPVワクチンが大きな有害事象を来してはいないことを示しています

■ 先に上げた日本産婦人科学会の声明では、以下のように述べられています。

HPVワクチンは接種により、注射部位の一時的な痛み・腫れなどの局所症状は約8割の方に生じるとされています。また、注射時の痛みや不安のために失神(迷走神経反射)を起こした事例が報告されていますが、これについては接種直後30分程度安静にすることで対応が可能です。
平成29年11月の厚生労働省専門部会で、慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されています。

(中略)

平成29年7月の厚生労働省研究班(牛田班)の報告では、HPVワクチン接種歴があり症状を呈する方に対する認知行動療法と言われるような治療方法の効果に関する解析結果が示され、症状のフォローアップのできた156例中115例(73.7%)は症状が消失または軽快し32例(20.5%)は不変、9例(5.8%)は悪化したとされました。HPVワクチン接種の有無にかかわらず、慢性の痛みや運動機能の障害などの症状が長く続く患者さんの中には回復が難しい方がいるのも事実であり、早期から専門家による診療が必要と考えられます。
今後は、このような思春期に多いとされる多様な症状を呈する患者さんに対しては、複数の診療科の専門家が連携して適切な治療にあたるとともに、社会全体で苦しんでいる患者さんをしっかり支えていくことが重要です。私たちは、HPVワクチンの接種の有無にかかわらず、こうした症状を呈する患者さんの診療体制のさらなる整備について、他の分野の専門家と協力して真摯に取り組んでまいります。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ HPVワクチンの有害事象に関するメタアナリシスにおいて、麻痺や慢性疲労症候群に関してはむしろ少なくなる可能性が示唆された。

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