以下、論文紹介と解説です。

Hansen PR, et al. Resilience of HPV vaccine uptake in Denmark: decline and recovery. Vaccine 2020; 38:1842-8.

デンマークで生まれた 12~15 歳のすべての女児 328,779人を対象に、HPVワクチンに対するメディアの否定的な報道と、その後の国家キャンペーンの有効性を検討した。

背景

■ 予防接種プログラムに対するショックにおける回復力は、その成功にとって重要であるが、回復力を示す実証的エビデンスはほとんどない。

■ そこで、メディアのネガティブな報道後のデンマークにおけるHPVワクチン接種の低下が、全国的な情報キャンペーンにより回復したことを特徴づけることを目指した。

 

方法

■ 1997 年から 2006 年までにデンマークで生まれた 12~15 歳のすべての女児 328,779人を対象に、集団ベースの後ろ向きコホート研究を実施した。

■ アウトカム指標は、女児がデンマークのプライマリケア医療機関でHPVワクチンを自由に接種できるようになった2009年から2019年までに、デンマーク国民健康登録簿に報告されたHPVワクチンの接種率(初回接種)だった。

■ 研究のために4つの時期を作成した。

■ すなわち、HPVワクチンが国家プログラムで他のワクチンの接種率に到達(2009年)、HPVワクチン接種に関する否定的な一部のメディア報道(2013年)、広範囲の否定的なメディア報道(2015年)、ワクチンの安全性と有効性に関する全国的な情報キャンペーン(2017年~2019年)である。

 

結果

メディアで否定的な報道があった期間には、HPVワクチン接種率は、最初の接種率の83.6%(95%CI 78.0%-89.7%)にまで低下した。

否定的な報道が多かった期間には接種率はさらに低下し、最初の49.6%(95%CI 44.5%-55.2%)にまで低下した。

情報キャンペーン後、HPVワクチン接種率は、キャッチアップ接種の影響もあり、最初の水準(109.2%; 95%CI 90.1%-132.4%)まで回復した。

■ この回復にもかかわらず、接種率が低下しなかった場合と比較すると、推定26,000人の女児がワクチンを接種しなかった。

 

結論

■ デンマークでの経験は、HPVワクチン接種に対する否定的なメディア報道に、国がどのように取り組んだか、そして当局による行動が着実に影響することを記録する最初の機会の1つを提供した。

 

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予防接種に対する否定的なメディア報道は接種率の低下をきたすが、国家的なキャンペーンで回復が見込めると、デンマークの経過が示している。

■ 国家によるキャンペーンで、HPVワクチンの接種率の回復は望めるとも言えます。

■ 現在のところ、HPVワクチンは定期接種にも関わらず、国の及び腰もあり接種率の低下が回復するに至っていません。

■ 接種の機会損失は、最終的には子宮頸がんの発症リスクをあげる結果になります。

■ そして、『名指しで』『海外の研究で』日本だけが亡くなる方が増えることがすでに報告されていることになります。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 予防接種に対する否定的なメディア報道は接種率の低下をきたすが、国家的なキャンペーンで回復が見込める。

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