以下、論文紹介と解説です。

Andersson NW, et al. Association Between Fexofenadine Use During Pregnancy and Fetal Outcomes. JAMA Pediatr 2020:e201316. [Online ahead of print.]

デンマークにおける妊娠1,287,668例から、傾向スコアマッチングを用いて妊娠中のフェキソフェナジンの使用とセチリジンの使用を比較し、胎児へのリスクを評価した。

重要性

■ フェキソフェナジンは、妊娠中のアレルギー疾患の治療薬として頻繁に使用されているが、フェキソフェナジン使用時の胎児への安全性は十分に検討されていなかった。

 

目的

■ 妊娠中のフェキソフェナジン使用に関連した胎児のアウトカムにおける有害なリスクを調査する。

 

研究デザイン、セッティング、参加者

■ 2001年1月1日から2016年12月31日までのデンマークでの妊娠を対象に、全国規模ベースのコホート研究を実施した。

■ データ解析は、2019 年 3 月 21 日から 2020 年 1 月 29 日までに実施した。

■ 1,287,668例の妊娠から、妊娠中のフェキソフェナジンの使用とセチリジンの使用を比較するために、プロペンシティスコアを用いて1:1の比率でマッチングさせた。

■ それぞれのアウトカム解析に応じて、試験コホートと曝露期間を適用した。

■ 感度解析では、妊娠中のフェキソフェナジン曝露の有無で比較したが、さらなる比較対象群として、妊娠前に使用したことのある妊娠と妊娠中にロラタジンを使用した妊娠も比較した。

 

曝露

■ フェキソフェナジンが記入された処方箋。

 

主なアウトカムと指標

■ おおきな先天的異常や自然流産。

■ セカンダリアウトカムは、早産、在胎不当過小児(small size for gestational age; SGA)、死産だった。

■ おおきな先天的異常、早産、SGAの有病率におけるオッズ比(odds ratios; OR)の推定にロジスティック回帰を用い、自然流産と死産のハザード比(hazard ratios; HR)の推定にはCox比例ハザード回帰を用いた。

 

結果

■ おおきな先天性異常や自然流産に対する解析では、フェキソフェナジン使用の妊娠における2962 例と4901 例を、それぞれセチリジン使用の妊娠に対し 1:1 の比率でマッチングさせた。

■ おおきな先天性異常の解析におけるフェキソフェナジン群の平均年齢(SD)は30.6(4.8)歳であり、自然流産の解析のための年齢は30.4(5.5)歳だった。

■ おおきな先天性異常を伴って生まれた乳児は、セチリジン使用時の112例(3.8%)と比較して、フェキソフェナジン使用時の118例(4.0%)の妊娠で発生した。

■ 自然流産は、セチリジン使用時の439妊娠(9.0%)に対し、フェキソフェナジン使用時の413妊娠(8.4%)で発生した。

妊娠中のフェキソフェナジン使用は、妊娠中のセチリジン使用と比較して、おおきな先天性異常(有病率のOR 1.06;95%CI 0.81~1.37)または自然流産(HR 0.93;95%CI 0.82~1.07)であり、リスク増加と関連していなかった。

早産は、セチリジン使用 382例(7.7%)と比較し、フェキソフェナジン使用 370例(7.5%)で発生した(有病率のOR 0.97;95%CI 0.83~1.12)

SGAは、セチリジン使用 523例(10.2%)と比較し、フェキソフェナジン使用 515例(10.1%)で発生した(有病率のOR 0.97;95%CI 0.83~1.12)

■ フェキソフェナジンを使用した妊娠は計16妊娠(0.3%)が死産であったのに対し、セチリジンを使用した妊娠では24例(0.4%)だった(HR 0.67;95%CI 0.36~1.27)。

■ ロラタジンを使用した妊娠と、妊娠中にフェキソフェナジンを使用していないがフェキソフェナジンを使用したことがある妊娠の比較を含む主要アウトカムの感度解析でも、同様の結果が得られた。

■ 妊娠中のロラタジン使用、妊娠中にフェキソフェナジンに曝露されていないがフェキソフェナジンを以前に使用した妊娠との比較を含む、主要アウトカムとしての感度分析は、同様の結果を示した。

 

結論と関連性

■ 妊娠中のフェキソフェナジンの使用は、胎児アウトカムに対する有害なリスクの増加とは関連していないようである。

 

 

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妊娠中の抗ヒスタミン薬として、フェキソフェナジン(アレグラ)も一つの選択肢となってくるかもしれない。

■ 妊娠中の抗ヒスタミン薬として、セチリジン(ジルテック)やロラタジン(クラリチン)などが使用されてきましたが、それに比べてリスクが変わらないといえます。

■ これまでは、妊娠中のフェキソフェナジン使用の胎児に対する安全性を調査した研究は1件のみだったようです(レトロスペクティブ症例対照研究) (Birth Defects Res A Clin Mol Teratol. 2009;85(2):137-150.)。

■ フェキソフェナジンはきわめて脳への移行性がすくない抗ヒスタミン薬であり、使用できる薬剤の幅がより広がることは歓迎すべきでしょう。

■ もちろん、アレルゲン回避や鼻腔へのワセリン塗布なども考慮しつつ、抗ヒスタミン薬を使用する場合はひとつの指標として考慮することになります。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 妊娠中のフェキソフェナジンの使用は、おおきな先天性欠損症、自然流産、早産、SGA、死産のリスクとの明らかな関連は見られなかった。

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