以下、論文紹介と解説です。

Caperell K, Pitetti R, Cross KP. Race and acute abdominal pain in a pediatric emergency department. Pediatrics 2013; 131:1098-106.

ピッツバーグ小児病院に腹痛を主訴に受診した1~18歳の小児9424人に関し、最終診断の頻度などを検討した。

目的

■ 腹痛により小児救急部(emergency department; ED)に受診した児の統計学的・臨床的要因とその転帰を調査する。

 

方法

■ 2年間にわたって腹痛を主訴にピッツバーグ小児病院の ED に受診した1~18 歳の患者の電子カルテをレビューした。

■ 統計学的特徴と臨床的特徴、受診時の結果を検討した。

■ 被験者は年齢、人種、性別で層別化された。

■ 多変量解析と再帰分割法を用いて、評価、治療、臨床的転帰の結果を群間で比較した。

 

結果

■ 研究期間中に9424人が受診し、包含基準および除外基準を満たした。

■ アフリカ系アメリカ人の児の61%が女性であったのに対し、白人の児は52%だった。

■ 白人の75%、アフリカ系アメリカ人の37%が民間の保険に加入していた。

虫垂炎の診断は、アフリカ系アメリカ人の1.9%、白人の5.1%にみられた。

年齢が高いほど、ED受診後に入院し、手術を受ける可能性が高かった

■ 虫垂炎は低年齢児ではまれだった。

便秘は一般的だった。

■ 診断による多変量解析および再帰分割解析では、評価、治療、転帰における人種差は反映されなかった。

 

結論

■ 便秘は腹痛を呈する児における最も一般的な診断だった。

■ このデータは、腹痛のある児の評価、治療、傾向に人種差がないことを示している。

 

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便秘は極めて多い病態。しかし便秘の診断は、簡単なようで難しいケースもある。

■ 便秘の画像検査は、かならずしも有効ではありません。

■ レントゲン検査は、かえって誤診のリスクをあげるかもという報告すらあります(Journal of Pediatrics 2017; 186:87-94. e16.)。

■ 身体所見にあわせて、浣腸の反応性をみつつ、スッキリ腹痛が改善すると医師も内心安堵する…という感じですね。

■ 便秘以外となると…本当に難しい場合もあります。虫垂炎ですら、一度は足元をすくわれた医師も多いでしょう。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 小児の腹痛の原因として、便秘はもっとも多い病態のひとつであるが、虫垂炎もすくなくない。

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