以下、論文紹介と解説です。
Wojtyniak K, Szajewska H. Systematic review: probiotics for functional constipation in children. Eur J Pediatr 2017; 176:1155-62.
小児の慢性機能性便秘の治療におけるプロバイオティクスの有効性をみた計7件のランダム化比較試験(515人)に対しメタアナリシスを実施した。
背景
■ 小児の便秘治療におけるプロバイオティクスの有効性に関する2010年のシステマティックレビューを更新する。
方法
■ MEDLINE、EMBASE、Cochrane Library、臨床試験登録、研究のリファレンスリストを2017年2月までに検索し、小児を対象に実施されたランダム化比較試験(randomized controlled trials; RCT)を言語による制限をせずに検索した。
■ 主要アウトカム指標は、研究者が定義した治療の成功とした。
結果
■ 計7件のRCT(515人)が組み入れられた。
■ 対象となった試験は、研究集団、プロバイオティクスの株、投与量、研究期間、追跡調査に関して異質性があった。
■ RCT2件の結果によると、治療の成功に関しLactobacillus rhamnosus casei Lcr35とプラセボ群に有意差はなかった。
■ 他のプロバイオティクスは単一試験のみで研究された。
■ 治療成功に関して、プロバイオティクス群と対照群に有意差はみとめられなかった。
論文から引用。プロバイオティクスに有効性はみとめられなかった。
■ プロバイオティクス株のうちのいくつかは排便頻度に何らかの効果を示したが、どのプロバイオティクスも便失禁の頻度や腹痛の頻度に有益な効果はなかった。
■ 有害事象はまれであり、重篤なものはなかった。
結論
■ エビデンスは限られるが、現在評価されているプロバイオティクスにおいて小児の機能性便秘の治療への使用は支持されない。
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プロバイオティクスが小児の慢性機能性便秘に無効…とするのは時期尚早かもしれないが、漫然と処方するのは考えものだろう。
■ この報告をもって、『便秘にプロバイオティクスが無効』とするのは尚早な面もあります。
■ というのも、同時期に行われたメタアナリシスでは、小児の便秘における便回数を増加させ、有益な効果をもたらすことが示されていますし(Frontiers in cellular and infection microbiology 2017; 7:153.)、成人に関しての機能性便秘に対するプロバイオティクスが有効であるというメタアナリシスもあるからです(Am J Gastroenterol 2014; 109:1547-61; quiz 6, 62.)。
■ また最近、日本からのランダム化比較試験により、Lactobacillus reuteri DSM 17938という菌株では、酸化マグネシウムと比較しても同じくらいの効果があったと報告されています(Nutrients 2020; 12:225.)。
■ とはいえ、『一般的には』プロバイオティクスの効果は低いと考えつつ、漫然と整腸剤だけで経過をみるような治療は控えたほうがよさそうです。
今日のまとめ!
✅ 小児の慢性機能性便秘に対し、プロバイオティクスの有効性は低そうだ。