以下、論文紹介と解説です。
Loft LH, . Using Facebook to increase coverage of HPV vaccination among Danish girls: An assessment of a Danish social media campaign. Vaccine 2020; 38:4901-8.
デンマークで行われたHPVワクチンへ接種率を高めることを目的とした全国キャンペーン「Stop HPV - stop cervical cancer」の一環で実施されたFacebookページ「Stop HPV - stop cervical cancer」の様々な投稿を分析した。
目的
■ この研究では、さまざまなFacebook(FB)の投稿が、HPVワクチン接種をためらっている親とどのように共鳴してFB上での対話に親をどのように関与させるかを評価する。
背景
■ ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus; HPV)のワクチン接種は、2009年に12歳の女児を対象としたデンマークにおける小児予防接種プログラムへの導入に成功し、接種率は約90%に達した。
■ しかし、ワクチンの安全性を疑問視する否定的な世論は、2015年以降、ワクチン接種率の急速な低下と一致した。
■ 2017年5月に、HPVワクチンへの信頼を回復してワクチン接種率を高めることを目的とした全国キャンペーン「Stop HPV - stop cervical cancer」を開始した。
■ キャンペーンの主要ターゲットグループである女児に対するHPVワクチン接種をためらっている母親たちの関心をひくために、FBとソーシャルメディア戦略を使用した。
方法
■ 2017年5月から2017年12月までに投稿されたFBのページ「Stop HPV - stop cervical cancer」の様々な投稿を分析した。
■ 投稿のリーチ、投稿のエンゲージメント、コメントの感想(ポジティブ、ニュートラル、ネガティブ)を分析した。
■ 投稿に対する意見とFB管理チームからの反応に関するデータのために、フォーカスグループが採用された。
結果
■ 2017年5月から2017年12月までに、84の特色のある投稿がFBページに掲載され、個人のFBプロフィールは3,476,023に達した。
■ フォーカスグループでは、保護者からより詳細な情報を求められた。
■ FB投稿とコメントの感想を分析したところ、事実に基づく投稿と比較して、個人的なストーリーの方がエンゲージメント率が高く、よりポジティブな対話を生み出していることが判明した。
結論
■ FBページ「Stop HPV - stop cervical cancer」は、HPVワクチン接種についてFBユーザーにリーチし、対話に参加させることに成功した。
■ 個人的な体験談は、FB上でポジティブな対話を生み出すのに効果的である。
■ しかし、HPVワクチン接種に関する情報に基づいた意思決定を可能にするためには、両親に対し事実に基づいた情報を提供することが重要であることに変わりはない。
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エビデンスとナラティブ。その2つのバランスが、納得できる情報として広がりやすくなるのかもしれない。
■ 情報の最初の入口としては、『ナラティブな体験談』も重要であることを再認識する結果です。
■ 医学はサイエンスですのでエビデンスに基づく情報は重要ですが、それだけでは情報を広げるのは難しいのかもしれません。
今日のまとめ!
✅ FacebookによるHPVワクチンの情報の拡散は、最初の入口はナラティブな『体験談』も必要なのかもしれない。