以下、論文紹介と解説です。
Wang K, et al. Mycoplasma pneumoniae and respiratory virus infections in children with persistent cough in England: a retrospective analysis. Pediatr Infect Dis J 2011; 30:1047-51.
14 日間以上続く持続的な咳嗽のある小児 179 人に関し、百日咳とマイコプラズマの血液検査やPCRで確定診断し、その咳の予後を確認した。
背景
■ 急性呼吸器感染症後の持続性の咳嗽は小児によくみられるが、臨床医は微生物学的診断なしに咳嗽の持続期間の正確な予後情報を提供することが困難であると考えられる。
■ 本研究では、Mycoplasma pneumoniae(Mp)の有病率を推定し、持続性の咳嗽のある小児におけるMpや呼吸器ウイルスの検出による予後的価値を評価する。
方法
■ 14 日間以上続く持続的な咳嗽のある小児 179 人の血液検査、鼻咽頭吸引液(nasopharyngeal aspirates ; NPA)、咳嗽の持続期間をレトロスペクティブに分析した。
■ これらの小児のうち 37%において血清学的に百日咳(Bordetella pertussis)が確認された。
■ NPAs のPCR検査と IgM 血清検査により Mp を検出し,NPAs のPCR検査により呼吸器感染症ウイルス(ヒトライノウイルス,インフルエンザウイルス,RSウイルス,ヒトメタニューモウイルス)を検出した。Kaplan-Meier法により、咳嗽持続期間の中央値を95%信頼区間(confidence intervals;CI)で算出した。
結果
■ 十分な血液および/または NPA を有する小児 170 人中 22人例(12.9%; 95%CI 8.7~18.8)で Mp を検出した。
■ Mp血清検査陽性の小児の咳嗽持続期間(中央値 39日; 95%CI 24~54)は、百日咳血清検査陽性の小児よりも有意に短かった(中央値 118日; 95%CI 82~154; P<0.001)。
■ 呼吸器感染症ウイルスの存在は、百日咳の小児における咳嗽期間を有意に長くはしなかった(中央値 154日; 95%CI 74-234; P=0.810)。
■ 百日咳と呼吸器感染症ウイルスの両方に感染していたのは3人の小児のみだった。
結論
■ Mpは、持続的な咳嗽のある小児において重要な感染症であり、百日咳よりも咳嗽の持続期間が有意に短い。
■ しかし、呼吸器感染症ウイルスを検出しても百日咳の小児における予後において付加的な価値はない。
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ながく続く咳になる百日咳に罹らないためにも、就学前の3種混合ワクチンの追加接種が勸められます。
■ 百日咳は、4種混合(もしくは3種混合)を乳児期に接種していても、だんだん効果がさがり、年長児にはその再感染でながく続く咳になることがわかります。
■ しかも、中央値で100日以上つづくことになり、百日咳に対しては有効な抗菌薬を使用しても咳にはあまり有効でないこともわかっています。
■ そのため、就学前に三種混合ワクチンを追加接種することが推奨されるようになりました。
百日せきの患者数1万人超え、流行の原因は 赤ちゃんに感染し重篤化するケースも
今日のまとめ!
✅ マイコプラズマは中央値39日、百日咳は中央値118日も咳がつづき、マイコプラズマは54日(8週間未満)で95%の患児で咳が収まっているといえそうだ。