以下、論文紹介と解説です。

Chang AB, et al. Children with chronic wet or productive cough—treatment and investigations: a systematic review. Chest 2016; 149:120-42.

気管支拡張症とは関係のない慢性の湿性または痰のある咳嗽(4週間以上)がある小児を対象に抗菌薬を使用すると有効かをみた研究に対するシステマティックレビューを実施した。

背景

気管支拡張症とは関係のない慢性の湿性または痰のある咳嗽(4週間以上)がある小児を対象に、関連する2つの重要な質問( key questions; KQs)に対しシステマティックレビューを実施した。

■ KQ1- 抗生物質は咳の改善にどれくらい効果があるのか? 咳嗽の改善に効果があるとすれば、どの抗生物質をどのくらいの期間使用すべきか?

■ KQ2-どのような場合に再検査を実施するべきか?

 

方法

■ システマティックレビューは、CHESTの咳専門家委員会の選抜メンバーによって確立されたプロトコルに基づいて実施された。

■ 2名がスクリーニングし、データを選択・抽出した。

■ システマティックレビュー、ランダム化比較試験(randomized controlled trials; RCT)、コホート研究(プロスペクティブ/レトロスペクティブ)、英語で発表された横断的研究を対象とした。

 

研究結果

■ データはシステマティックレビューとメタアナリシスの Preferred Reporting Items(好ましい報告項目)をフローチャートで示し、概要を表にした。

■ KQ1では15件(システマティックレビュー3件、RCT3件、プロスペクティブ研究5件、レトロスペクティブ研究4件)、KQ2では17件(RCT1件、プロスペクティブ研究11件、レトロスペクティブ研究5件)が含まれていた。

■ RCT(KQ1)のデータを統合すると、咳嗽の改善に対するnumber needed to treat(NNT)は3人(95%信頼区間 2.0~4.3人)だった

論文から引用。4週間以上つづく湿性咳嗽に、抗菌薬を投与すると咳の改善に有効。

■ 概して、プロスペクティブ研究とレトロスペクティブ研究の結果は一致していたが、若干のばらつきがあった。

 

結論

■ 慢性的な(4週間以上の)湿性または痰のある咳を伴う14歳以下の小児では、適切な抗生物質の使用により咳の改善があるという質の高いエビデンスがある。

■ また、湿性咳嗽の小児に特異的な咳嗽が認められる場合には、さらなる検査(例:気管支鏡検査、胸部CT、免疫検査)を行うべきであるという質の高いエビデンスもある。

■ 抗生物質治療を4週間行っても湿性咳嗽が改善しない場合には、基礎となる肺疾患や他の疾患があるかどうかを判断するために、専門施設に紹介しさらなる調査を行うべきであるという中程度のエビデンスがある。

 

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繰り返しますが、風邪に抗菌薬が必要というわけではありません。

■ 遷延性細菌性気管支炎に関しては、最近改定されたガイドラインにも掲載されるようになり、クリニカルクエスチョン(CQ)の最初に取り上げられています。

■ この場合、乾性咳嗽に対しては検討されていないことを留意しなければなりませんし、慢性でない(4週間未満)の場合は話は異なることも考えておく必要があります

■ そして当然、ウイルス性の風邪には抗菌薬は不要です。

■ さらに、使用されている抗菌薬は基本的にペニシリンです(マクロライドではありません)。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 4週間以上続く湿性咳嗽に対して、抗菌薬を使用すると咳の改善に有効かもしれない。

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