以下、論文紹介と解説です。

Casati M, et al. Safety of use, efficacy and degree of parental satisfaction with the nasal aspirator Narhinel in the treatment of nasal congestion in babies. Minerva Pediatr 2007; 59:315-25.

ウイルス性の上気道炎のある212人(女児104人,男児108人,平均生後9.6ヵ月)の児に対し、Narhinel(生理食塩水を垂らして吸引する)を1日3回7日間行い、リスクや満足度などを評価した。

目的

■ 本研究の目的は、ウイルス性上気道感染症の乳児の鼻汁を吸引して除去するための医療機器の安全性、有効性、親のコンプライアンスを評価することだった。

 

方法

■ 市販後調査と顧客満足度調査の一環として、イタリア・ロンバルディア州の小児科医を対象とした前向き非比較コホート観察研究が実施された。

■ ロンバルディア州のイタリア小児科医連盟(Federa-zione Italiana Medici Pediatri, FIMP)に所属する小児科医22人から、240人の患者が入院した。

■ すべての患者が安全性評価に参加した。

■ また,212人(女児104人,男児108人,平均月齢9.6ヵ月[範囲1.8~27.6ヵ月])について臨床効果の評価を行った(28例が除外)

■ 入院時と初回の外来診察(E1)において,両親はかかりつけの小児科医から,授乳直前に1日3回7日間、鼻汁吸引による鼻洗浄を行うよう指導された。

■ 治療終了時に2回目の外来診察(E2)を行い、保護者の治療日誌を収集し、満足度調査票に回答してもらった。

■ 安全性は以下の方法で確認した。
1) イタリア厚生省のインシデント/ニアインシデント報告書
2) 両親が毎日装置を使用している間に起こった出来事を記録した治療日誌

■ 効果は、2回の診察時(E1/E2)に小児科医が測定した様々な臨床的パラメータ(前・後鼻漏、口呼吸、ノイズのある鼻呼吸音、鼻から伝わるノイズのある胸部聴診音)と、睡眠の質、摂食/呼吸、薬物使用に関する保護者の治療日誌の記入事項を分析することで評価した。

■ 保護者の満足度とコンプライアンスは、E2時に保護者にアンケートを実施し評価した。

■ この鼻汁吸引器具は、2007年にはイタリア、スペイン、ポルトガルではNarhinel、ギリシャではOtrisalin、フランスではProrhinel、バルト諸国(リトアニア、ラトビア、エストニア)ではRhinomer、ロシアではOtrivin Baby、スウェーデンではOtri-Babyの名称で販売されている。

 

結果

《安全性》

イタリア厚生省に報告されたインシデントはなく、鼻出血(6件)、長い啼泣(30件)、落ち着きのなさ・いらいら(2件)、嘔吐等の軽度の副作用(2件)が計40件あった

■ これらの事象はすべて、本装置の使用に直接関連するものではなかった。

 

《有効性》

治療終了後(E2)に評価されたすべての臨床項目において、E1と比較して明らかな改善が認められた(前鼻漏 [74%減少]、後鼻漏 [80%減少]、口呼吸 [78%減少]、呼吸雑音 [73%減少]、胸部伝導音 [83%減少])

■ また,治療日誌の記載内容からも、治療期間中に安眠が67%増加,摂食の質が36%増加、呼吸状態が76%改善、薬物投与が41%減少するなど、子どもらの状態が徐々に改善していることが示唆された

■ 各項目(医師の観察と保護者の観察)のp値は、1日目から8日目までに統計的に有意なP<0.001の改善だった。

論文から引用。乳児の風邪症状の経過。

■ 満足度とコンプライアンスは良好で、90%以上の保護者が満足していた(非常に満足 56%、かなり満足 43%)。

■ 88%の保護者がこのデバイスは使いやすく、86%の保護者がNarhinel®は他の類似の装置よりも効果的であると判断したと報告した。

 

結果

■ Narhinel®は安全かつ有効で、使いやすい装置であることが示され、上気道感染症による鼻閉症の乳児の両親は、非常に満足していた。

 

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この結果は、あくまで前後比較研究によるものであり『他の方法より有効』といえるものではないが、鼻汁の吸引はリスクが高い方法ではないともいえそうだ。

■ この研究結果はあくまで前後比較研究ですので、『Narhinel』を使用しない群よりよくなったとは結論できません。

■ しかし、生理食塩水を注入したり吸引することに対するリスクは高くはなさそうともいえそうです。

■ とはいえ個人的には、『保護者が口で吸う』ことに関しては保護者が風邪をもらってしまう可能性があり、あまり勧めていません

■ 最近はかなりしっかりした電動式の吸引器が安価になってきたこともあり、そちらを勧めることが増えました。

■ とはいっても1万円前後の価格ですので、敷居が高い方もいらっしゃるでしょう。その場合の選択肢としてはありかもしれませんね。

 

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今日のまとめ!

 ✅ Narhinelという鼻汁吸引の方法は、リスクは高くなく患者満足度も高いようだ。

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