以下、論文紹介と解説です。

Chan FYY, et al. Decision rule to predict pneumonia in children presented with acute febrile respiratory illness. Am J Emerg Med 2020.

救急外来を受診した発熱を伴う呼吸器症状のある6歳未満の小児967人を、症状と臨床経過で肺炎を予測できるかの判定ツール(PAFRI Rule)を検証した。

背景

■ 急性の発熱を伴う性呼吸器症状を有する患者、特に呼吸窮迫のない症状が安定した小児患者において、医師が肺炎を特定することはよく出会う課題である。

■ 胸部X線撮影を指示する必要性の判断を補助するための判定ルールが必要である。

 

方法

■ 本研究は、3つの救急科を対象とした多施設前向き研究である.

■ 急性の発熱を伴う呼吸器症状のある 6 歳未満の小児をリクルートした。

Pediatric Acute Febrile Respiratory Illness Rule(PAFRI Rule)の算出と検証には、Split sample法を採用した。

■ PAFRIはロジスティック回帰による調整オッズ比に基づいて重み付けを行った。

 

結果

■ 評価された967人のうち、530人が胸部X線検査を受け、91人がX線検査で肺炎の証拠が示唆された。

PAFRI Ruleはロジスティック回帰から導き出され、5つの重み付き予測因子は、①発熱期間<3日(0点)、3~4日(2点)、5~6日(4点)、7日以上(5点)、②悪寒(2点)、③鼻症状(-2点)、④胸部異常所見(3点)、⑤SpO2≦96%または頻呼吸(3点)であった。

PAFRIルールのROC曲線下面積、Bilkis Decision Rule、Bilkis Simpler RuleのROC曲線下面積はそれぞれ0.733、0.600、0.579であった。

論文から引用。ROC曲線。

■ PAFRIスコアが0以上の場合、感度は91.7%、陰性適中率は97.7%となった。

 

結論

■ PAFRIルールは、小児患者の胸部X線撮影の必要性を導くための参考ツールとして利用できる。

■ 有望ではあるものの、PAFRIルールはさらなる検証が必要である。

 

 

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呼吸器症状を伴い発熱期間が長引いたら、胸部X線検査をしたほうがよいかもという一般的な感覚は、あながち間違いでもなさそうだ。

■ 小児に関しても肺炎の予測ルールは報告が複数あります(Pediatrics 2011; 128:246-53.1. )(Bmj 2013; 346:f1706.)。

■ このような予測ルールは別の集団で行うと同じ結果にならないことも多く扱いが難しいのですが、発熱期間での層別化とSpO2の低下や頻呼吸の重み付けが普段の診療と感覚が近いと思えました。

■ 発熱が長引き、頻呼吸になりSpO2が低下していると『重症化している(肺炎に移行している)かもしれない』というアラームが頭の中で鳴る小児科医も少なくないでしょう。

■ 一方で、『鼻水があること』がマイナスポイント(肺炎でない可能性が高い)としている点も、いいなあと思いますね(鼻症状が咳と同時にあれば感冒の可能性が高くなる)。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 小児の肺炎の可能性は、発熱期間、SpO2低下(or頻呼吸)、悪寒で可能性が上がり、鼻症状で下がると予測される。

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