以下、論文紹介と解説です。
Ogawa C, et al. Treatment with silver nitrate versus topical steroid treatment for umbilical granuloma: A non-inferiority randomized control trial. PLoS One 2018; 13:e0192688.
新たに臍肉芽腫と診断された新生児207人に対し、硝酸銀処置(1回/週)とステロイド外用剤(1日2回)にランダム化し、2週間の効果を比較した。
目的
■ この前向き多施設ランダム化比較試験の目的は、新生児臍肉芽腫の治療における硝酸銀焼灼術の有効性をステロイド外用軟膏と比較することだった。
方法
■ 2013年1月から2016年1月まで非盲検非劣性ランダム化比較試験を実施した。
■ 硝酸銀焼灼術群とステロイド外用軟膏群の主要評価項目は、非劣性マージン10%を適用した治療2週間後の治癒率とした。
■ 治癒率は3週間の治療終了まで評価された。
結果
■ 参加者は、新たに臍肉芽腫と診断された207人の新生児であり、硝酸銀焼灼術群 104人またはステロイド軟膏外用薬群 103人にランダム化された。
ステロイド外用薬は、保護者による洗浄後に1日2回、病変部に0.05%betamethasone valerate軟膏(リンデロンV)を塗布し、ドレッシング材は使用せず、病変部の乾燥もしなかったそうです。
■ 治療2週間後の治癒率は硝酸銀焼灼術群87.5%(104人中91人),ステロイド外用軟膏群82%(100人中82人)だった。
■ 群間の差は-5.5%(95%信頼区間 -19.1%~8.4%)であり、非劣性基準が満たされていないことが示された。
論文より引用。
■ 3週間後のステロイド軟膏外用療法による治癒率は、硝酸銀焼灼療法による治癒率とほぼ同等だった(104人中94人[90.4%]vs 100人中91人[91.0%]; 0.6%[-13.2%~14.3%])。
■ 両群で重大な合併症は発生しなかった。
結論
■ 本研究では、ステロイド軟膏外用剤は硝酸銀焼灼術に対し非劣勢は認められなかったが、これはおそらく治癒率が予想よりも低かったためであり、パワー不足の試験であったと考えられる。
■ しかし、硝酸銀焼灼術は化学熱傷のリスクがあること、ステロイド軟膏外用剤の全体的な有効性が硝酸銀焼灼術と同程度であることを考えると、ステロイド軟膏外用剤はその安全性と簡便性から新生児の臍肉芽腫の治療において良い選択肢と考えられるかもしれない。
■ 非劣性を明らかにするためには、より大規模な研究が必要である。
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新生児期の臍肉芽腫に対し、ステロイド外用薬もひとつの選択肢と言えそうだ。
■ 最近の臍肉芽腫の総論を確認すると、硝酸銀処置が最も一般的とは記載があります(Journal of Pediatrics and Neonatal Care 2016; 4.)。
■ ですので、硝酸銀処置がいけないというわけではなさそうです。
■ 先行して行われた海外の研究はクロベタゾール(デルモベート=I群ステロイド外用薬)が使用されており、30日間の有効性が硝酸銀と同等、エタノールよりよいという結果になっています(Acta Paediatr 2015; 104:174-7.)。
■ ただしこの報告には『I群ステロイド外用薬は注意しなければならないのではないか』というコメントが寄せられています(Acta Paediatr 2015; 104:e49.)。
■ 今回の研究は吉草酸ベタメタゾンエステル(リンデロンV=III群ステロイド外用薬)が使用されており、しかも2週間という期間です。そういう意味では安全性は高そうに思われます。
■ 非劣勢を証明するほどの例数ではなかったとはいえ硝酸銀にはリスクも低いながらありますし、個人的には試していいかなと思っています。
今日のまとめ!
✅ 新生児の臍肉芽腫に対する処置は、III群ステロイド外用薬でも硝酸銀処置と同じくらいの有効性があるかもしれない。