以下、論文紹介と解説です。
Schnyder JL, et al. Fractional dose of intradermal compared to intramuscular and subcutaneous vaccination - A systematic review and meta-analysis. Travel Med Infect Dis 2020:101868.
12種類のワクチンに関し、皮下接種・筋肉内接種と、皮内接種の免疫原性を比較した研究のメタアナリシスを実施した。
背景
■ ワクチンの供給不足は世界的な懸念である。
■ そこで、標準的な方法の代替として皮内接種(intradermal ;ID)を行うことで、ワクチンの免疫原性と有効性を損なうことなくワクチンの供給量を増加させることができるのではないかと仮説を立てた。
方法
■ システマティックレビューとメタアナリシスを実施し、Medline、Embase、Web of Science データベースを検索した。
■ 研究は以下の場合に基準を満たしたと考えた。
■ すなわち、認可を受けた現在入手可能なワクチンが使用されている;IDの分割投与量がIMもしくはSC接種と比較されている;初期免疫接種スケジュールが評価されている;免疫原性、安全性データおよび/またはコストが報告されている、という基準である。
■ リスク差(risk differences ; RD)を算出した。
■ メタアナリシスの対象となった研究は、以下の場合に含まれた。
■ すなわち、事前に定義された予防に対する免疫相関関係が評価されている; WHOが推奨するスケジュールと抗原用量が対照群に使用されている; 初期予防接種群と対照群の両方に同じスケジュールが適用されているという基準である。
■ PROSPERO登録番号:CRD42020151725
結果
■ 一次検索では5,873件の論文がヒットし、そのうち156件の論文が含まれ、12種類のワクチンが対象となった。
■ インフルエンザ(H1N1. H1N1:RD -0.01;95%CI -0.02, 0.01;I2 = 55%、H2N3:RD 0.00;95%CI -0.01, 0.01;I2 = 0%、B:RD -0.00;95%CI -0.02, 0.01;I2 = 72%)、狂犬病(RD 0.00;95%CI -0.02, 0.02;I2 = 0%)、B型肝炎ワクチン(RD -0.01;95%CI -0.04, 0.02;I2 = 20%)については、免疫原性の非劣性が示された。
■ その他のワクチンの臨床試験では有望な結果が得られたが、研究の数が少なかった。
結論
■ いくつかのワクチン(例:インフルエンザ、狂犬病)に関しては、標準的な投与経路と比較し、IDによる予防投与経路を使用することで接種量/抗原量を削減できる可能性がある。
■ 妥当であれば、ワクチンの試験にID接種群を含めるべきである。
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皮内接種という投与ルートは、今後注目されるかもしれない。
■ もちろん、普段の接種としては皮内(もしくは筋注)で適正な量を接種するべきです。
■ ただ、皮内接種は思ったより免疫原性がよい投与ルートなのだと思いました。
■ 最近、マイクロニードルパッチを使用したワクチン投与が開発されてきており、その投与ルートは皮内になります(薬学雑誌 2019; 139:1129-37.)。
■ 古くて新しい投与ルートなのかもしれません。
今日のまとめ!
✅ 一部のワクチンに関しては、皮内接種の有効性が示されている。