以下、論文紹介と解説です。

Kiriyama K, et al. Premenstrual deterioration of skin symptoms in female patients with atopic dermatitis. Dermatology 2003; 206:110-2.

アトピー性皮膚炎の日本人女性286人を対象に、月経周期が皮膚病変に影響を与えるかどうか、月経前症候群の症状があるかどうかを問診した。

背景

■ アトピー性皮膚炎の女性は月経周期に伴って皮膚の増悪が認められることが多いが、情報は乏しい。

 

目的

■ アトピー性皮膚炎の月経周期に伴う悪化の臨床的特徴を明らかにする。

 

方法

アトピー性皮膚炎の日本人女性286人を対象に、月経周期が皮膚病変に影響を与えるかどうか、月経前症候群の症状があるかどうかを問診した。

■ また、月経周期の影響を受けているかどうか、もしくは月経前症候群の症状があるかどうかを確認するために問診した。

 

結果

問診をした286人のうち、134人(47%)が月経前週に皮膚の悪化を経験しており、そのほとんどが月経の前週に発症していた。

■ 毎月の皮膚悪化の重症度には個人差があった。

■ 月経前の皮膚悪化を呈した患者はすべて月経前症候群の症状を有していた。

 

結論

■ 月経前の皮膚病変の悪化は、アトピー性皮膚炎の女性の約半数に見られる。

■ 月経前の皮膚病変の悪化には、月経前症候群が関係している。

 

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月経周期でアトピー性皮膚炎が悪化することは少なくないようだ。

■ アトピー性皮膚炎の増悪は、月経周期におけるプロゲステロンのピークで起こるという報告もあります(Clinical and experimental dermatology 2015; 40:111-5.)。

■ また、月経前のホルモン変動で抑うつ状態等の精神症状も引き起こす月経前症候群も、アトピー性皮膚炎を悪化させる理由になるようです。

■ もちろん、まずは生活のリズムを整え、アトピー性皮膚炎の治療自体を丁寧に行うことが求められます。睡眠不足は皮膚の老化や回復に影響しますし、小児アトピー性皮膚炎のかゆみは、睡眠不足を来たし本人と家族の生活の質をさげるからです(Clinical and experimental dermatology 2015; 40:17-22.)(Acta dermato-venereologica 2008; 88(3): 234-9.)。

■ 『生理が重い』とする訴えはアトピー性皮膚炎だけでなくお聞きすることが多いものです。

■ 女性診療科への受診をお勧めすることが多いのですが、最終的には自分で継続して拝見していることが多いです。

■ その場合、私は漢方薬を使用することが多く、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、加味逍遙散、芍薬甘草湯、桃核承気湯などを病態にあわせて使っています。

管理人注
日本産婦人科学会のガイドラインにも、これらの漢方薬に関しての言及があります。
産婦人科診療ガイドライン2017

 

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今日のまとめ!

 ✅ 月経周期でアトピー性皮膚炎が悪化することは少なくなく、月経前に悪化するケースが多いようだ。

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