以下、論文紹介と解説です。

Su KW, et al. Food aversion and poor weight gain in food protein-induced enterocolitis syndrome: A retrospective study. J Allergy Clin Immunol 2020; 145:1430-7.e11.

ボストンの4病院におけるFPIES患者230人の臨床的特徴と消化管症状をレトロスペクティブに調査した。

背景

食物蛋白誘発胃腸炎(Food protein-induced enterocolitis syndrome;FPIES)は、非IgE依存性消化管性食物アレルギーの一型である。

■ 消化管症状の病歴と転帰、特に合併症、家族歴、食物への嫌悪、体重増加不良に関するデータは不十分である。

 

目的

■ 本研究では、FPIESの消化管症状のアウトカムと関連するリスク因子を明らかにすることを目的とした。

 

方法

■ ボストンの4病院でFPIES患者の臨床的特徴と消化管アウトカムをレトロスペクティブに解析した。

 

結果

■ FPIES患者は230人であり、急性FPIESのみ180人、慢性FPIESが8人、両方ある患者が15人だった。

食物の誘因としては、オート麦(34.5%)、米(29.6%)、牛乳(19.2%)が最も一般的だった。

論文から引用。オート麦・米が乳より多い。

■ アレルギー性直腸炎の病歴(23.2%)、炎症性腸疾患の家族歴(9.4%)、セリアック病(7.3%)の有病率は一般集団と比較して高かった。

1種類または2種類の食物をトリガーとするFPIES患者と比較して、3種類以上の食物をトリガーとする患者では、食物を嫌悪するリスクが増加した(修正オッズ比 3.07;95%CI 1.38~6.82;P=0.006)

牛乳(調整オッズ比 3.41;95%CI 1.21-9.63;P = 0.02)やバナナ(調整オッズ比 7.63;95%CI 2.10-27.80;P = 0.002)がトリガーとなったFPIESでは、体重増加不良のリスクが増加した

論文より引用。

 

結論

■ 消化管合併症と家族歴はFPIES患者で一般的だった。

■ 3種類以上のトリガーのあるFPIES患者は食物嫌悪のリスクがあった。

■ 牛乳とバナナが引き金となっているFPIES患者は体重増加のリスクがあった。

 

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FPIESの体重増加不良を来さないために、栄養的な配慮を要する。

■ この論文では、以下のように述べられています。

Additional studies are required to clarify the mechanism of why those patients are at risk of food aversion or poor body weight gain. As recommended, the early, aggressive involvement of dieticians can help children affected by FPIES receive healthy nutrition and prevent the development of food aversion.

それらの患者がなぜ食物嫌悪や体重増加不良のリスクにさらされているのか、そのメカニズムを明らかにするための追加研究が必要である。推奨されているように,栄養士が早期に積極的に関与することで,FPIESとなった子どもたちが健康的な栄養を摂取し食物嫌悪を防ぐことができる。

■ 講演では、『FPIESの過剰診断により、除去食を広く行うことを懸念する(私の意訳)』といった文脈でした。

■ FPIESの診断は簡単ではなく、除去食が行われやすい土壌があるとは思います。日本ではバナナのFPIESは多いとはおもいませんが、乳が最も多いため、低アレルゲンミルクをはやめに導入するなど栄養に配慮した介入が必要だろうと感じました。

 

今日のまとめ!

 ✅ FPIESによる牛乳やバナナの除去では体重増加不良のリスクが増加するようだ。

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