以下、論文紹介と解説です。

Chung JR, et al. Patterns of Influenza Vaccination and Vaccine Effectiveness Among Young US Children Who Receive Outpatient Care for Acute Respiratory Tract Illness. JAMA Pediatr 2020; 174:705-13.

米国インフルエンザワクチン効果ネットワークの5施設に受診した生後6 ヵ月~8 歳の小児7533人に対し、診断陰性例コントロール研究によりインフルエンザワクチンの有効性を比較した。

重要性

■ 幼児期のインフルエンザ罹患率は高く,インフルエンザワクチン接種はウイルスとその合併症を予防するための第一の戦略である。

■ インフルエンザワクチンの初回接種を1回 vs 2回で接種した場合の臨床的な予防効果の違いについては、あまり知られていない。

目的

■ 米国で急性呼吸器疾患の外来診療を受けている幼児のインフルエンザワクチン接種パターンを明らかにし,インフルエンザワクチン接種回数別に,インフルエンザに対するワクチンの有効性(vaccine effectiveness; VE)を比較する。

試験計画

■ この診断陰性例コントロール研究は、2014-2015年から2017-2018年のインフルエンザシーズンに、米国インフルエンザワクチン効果ネットワークの5施設の救急科を含む外来で実施された。

■ 本研究は、2014年11月5日から2018年4月12日まで、ローカルにインフルエンザが流行している期間に実施された。

■ 咳を伴う急性呼吸器疾患で、発症から 7 日以内に外来診療に来院した 生後6 ヵ月~8 歳の小児を対象とした。

■ すべての小児は、研究目的のためにインフルエンザのリアルタイムPCRを用いて検査された。

暴露

■ 州の予防接種情報システムを含む電子カルテから文書化された不活化インフルエンザワクチン1回もしくは2回接種を入学シーズンに受ける。

主なアウトカムと測定

■ インフルエンザのリアルタイムPCR検査を用いた急性呼吸器感染症による受診。

結果

■ 7533人のうち、3480人(46%)が女児、4687人(62%)が非ヒスパニック系白人、4871人(65%)が5歳未満だった。

■ 登録シーズンにワクチンを接種していない子どもは計 3912 人(52%)、完全接種の小児は 2924 人(39%)、部分接種の小児は 697 人(9%)だった。

インフルエンザワクチンに対する調整後VEは、完全ワクチン接種で51%(95%CI 44%~57%)、部分ワクチン接種で41%(95%CI 25%~54%)だった。

論文から引用。2回接種のほうが1回接種よりVEが良好。

ワクチン接種を受けていない生後6ヵ月~2歳の小児1519人のうち、登録期間中の2回接種によるVEは53%(95%CI 28%~70%)、1回接種のVEは23%(95%CI -11%~47%)だった。

論文から引用。2歳以下ではより、2回接種の方が有効。

■ なお、2回接種を受けた小児は、1回接種のみを受けた小児に比べてインフルエンザ陽性となる可能性が低かった(修正オッズ比 0.57;95%CI 0.35~0.93)

結論と関連性

■ 米国のインフルエンザワクチン政策と整合して、推奨された回数の接種を受けた場合、インフルエンザの4シーズンにおいて部分接種よりも高い VE だった。

■ ワクチン接種を受けていない小児の2回接種率を向上させる努力は、この集団におけるインフルエンザの負担を軽減する可能性がある。

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8歳以下(とくに2歳以下)に関しては、初回接種は1回より2回が有効。しかし、前年のインフルエンザワクチンを実施すれば翌シーズンが1回で良いかどうかまでは明らかとはいえない。

■ 8歳以下(特に2歳以下)では、1回接種より2回接種が有効であろうといえます。

■ ここで問題になるのは、『WHO(世界保健機関)や米国では、生後6か月~8歳まで(9歳未満)は2回接種ですが、前年に2回接種している場合には1回接種をすすめています。9歳以上は毎年1回接種です。接種回数に関してはかかりつけ医とご相談ください。』という、世界的な推奨です。

■ 最近、前シーズンのインフルエンザワクチンが、次のシーズンの抗体産生をよくする可能性があることが報告されています。

■ しかし、あくまで抗体産生の結果であり、ランダム化比較試験でワクチンの効果(VE)までみた研究は結局見つけられていないです。

 

今日のまとめ!  ✅ 8歳以下(特に2歳以下)の小児の初回のインフルエンザワクチンに関しては、1回接種より2回接種が有効。

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