以下、論文紹介と解説です。
Lei J, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. N Engl J Med 2020; 383:1340-8.
2006年から2017年までのスウェーデンの10~30歳の男女1,672,983人を追跡調査し、4価HPVワクチン接種とその後の子宮頸がんの発症リスクを評価した。
背景
■ 悪性度の高い子宮頸部病変の予防に対し4価ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus; HPV)ワクチンの効能と有効性が示されている。
■ しかし,4 価 HPV ワクチン接種とその後の浸潤性子宮頸がんのリスクとの関係を示すデータは不足している.
方法
■ スウェーデンにおける全国人口動態および健康登録を用いて、2006年から2017年までの10~30歳の男女1,672,983人の集団を追跡調査した。
■ HPVワクチン接種と浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を、追跡時の年齢、暦年齢、居住郡、教育レベル、世帯収入、母親の出生国、母親の病歴を含む親の特徴を制御して評価した。
結果
■ 研究期間中に,31 歳の誕生日までの女児および女性を対象に、子宮頸がんの評価を行った.
■ 子宮頸がんと診断されたのは、4価HPVワクチンを接種した女性19人と、接種しなかった女性538人だった。
■ 子宮頸がんの累積発症率は、ワクチン接種を受けた女性では10万人あたり47例、ワクチンを受けていない女性では10万人あたり94例だった。
■ 追跡調査時の年齢により調整すると、ワクチン接種集団とワクチン未接種集団を比較した場合の罹患率比は0.51(95%信頼区間[CI] 0.32~0.82)だった。
■ 他の共変量により追加調整後の罹患率比は0.37(95%信頼区間[CI] 0.21~0.57)だった。
■ すべての共変量で調整後、17歳以前にワクチンを接種した女性における子宮頸がん罹患率比は0.12(95%CI 0.00~0.34)であり、17~30歳でワクチンを接種した女性の罹患率比は0.47(95%CI 0.27~0.75)だった。
論文より引用。HPVワクチンとその後の子宮頸がんの発症。
結論
■ スウェーデンの女児および 10~30 歳の女性において、4 価 HPV ワクチン接種は,集団レベルでの浸潤性子宮頸がんリスクの発症を大幅に低下させた。
( Swedish Foundation for Strategic Research などによる資金提供)。
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HPVワクチンのアウトカムを、はっきりと子宮頸がんとした大規模な研究。とても重要でしょう。
■ この研究の白眉である部分は、これまでの研究は『高度異形成(がんになる前の組織変化)』を指標にしていたのですが、はっきりと子宮頸がんをアウトカムにしていることです。
■ そして、17歳以下でHPVワクチンを接種していたほうが有効性が高いことを示しました。
■ なお、経過観察期間が2006-2017年と12年程度です。子宮頸がんへの発展は10~20年が目安ですので、さらに長期間観察するとさらに子宮頸がんの患者さんは増えてくるでしょう。
■ ただし、この研究はランダム化比較試験ではありません。ですので、厳密に言えばさらに研究は必要かもしれませんが…とはいえ、ここまではっきりするとランダム化比較試験自体が『倫理的に実施困難』となります。
■ その中で、海外が注目しているのが接種率が低い日本です。
■ 最近、『海外からの報告で』『HPVワクチンの接種率が低下した日本において、今後どれくらいの方が子宮頸がんで亡くなる可能性があるか』という試算が研究結果として発表されました。
■ 日本で、今後子宮頸がんで亡くなる方が減らずに、海外では『希少がん』になってくることが予想されているのです。
■ そんな未来なんて、予想したい方はいないでしょう。ここから、日本の行政が動くことが強く期待されます。
■ メディアのネガティブキャンペーンで接種率が低下しながらも、政府が率先して運動をおこない、接種率が回復したデンマークの前例もあります。
■ HPVワクチンに関する最近の情報は、有志によるクラウドファンディング『みんパピ』のページをみると、よく理解できると思います。
今日のまとめ!
✅ HPVワクチンの有効性を、『子宮頸がん』をアウトカムとしてはっきりと効果を示した大規模研究が発表された。