以下、論文紹介と解説です。
Eichenfield LF, et al. Safety and Efficacy of VP-102, a Proprietary, Drug-Device Combination Product Containing Cantharidin, 0.7%(w/v), in Children and Adults With Molluscum Contagiosum: Two Phase 3 Randomized Clinical Trials. JAMA dermatology.Sep 23;e203238. doi: 10.1001/jamadermatol.2020.3238. Online ahead of print.
2歳以上の伝染性軟属腫患児528人に対し、カンタリジンを含有したVP-102軟膏もしくは基剤にランダム化し、有効性を比較した。
重要性
■ 伝染性軟属腫(Molluscum contagiosum; MC)は、主に小児に発症する一般的なウイルス性皮膚感染症である。
■ 発疱(水疱を生じさせる)外用剤であるカンタリジンは、MCに対して配合されてきた歴史があるが,大規模臨床試験では用法・用量,レジメン,塗布方法などの安全性・有効性は実証されていない。
目的
■ カンタリジンを0.7%(w/v)含有するVP-102の安全性と有効性を、MC患者を対象に、基剤と比較して検討する。
試験デザイン、セッティング、参加者
■ 第3フェーズランダム化二重盲検基剤対照試験(同一デザインのCantharidin Application in Molluscum Patients [CAMP-1およびCAMP-2])が、2回にわたり全米の31施設で実施された。
論文から引用。研究フローチャート。
■ 参加したのは2歳以上のMC患者528人である。
■ CAMP-1は2018年3月21日から11月26日まで、CAMP-2は2018年2月14日から9月26日まで実施された。
介入
■ 参加者は、治療可能な全病変にVP-102もしくは基剤を外用するか、病変が完全に軽快するまで21日ごとに最大4回までの治療に無作為に割り付けられた(3:2)。
主要評価項目および測定
■ 有効性における主要評価項目は,試験終了後84日目に、すべてのMC病変(試験開始時および新らしく出現)が完全に軽快した基剤投与群に比較した VP-102投与群の率だった。
■ 有効性の高い集団については、ITT解析を実施した。
■ 副次的効果として、21日目、42日目、63日目に病変が完全に軽快した率を示した。
■ 安全性には、予想される局所の皮膚反応を含む有害事象の評価が含まれた。
結果
■ 登録された 528人のうち、527 人が治療を受けた(CAMP-1、265人; CAMP-2、262人)。
■ CAMP-1とCAMP-2の平均年齢(SD)は、VP-102群で7.5歳(5.3歳)と7.4歳(8.0歳)、基剤群で6.3歳(4.7歳)と7.3歳(6.7歳)であり、527人中267人(50.7%)が男児であった。
■ CAMP-1(VP-102 46.3% vs 基剤 17.9%; P<0.001)およびCAMP-2(VP-102 54.0% vs 基剤 13.4%; P<0.001)であり、VP-102投与により、試験終了時にMC病変が完全に軽快した率が基剤に比べて優れていた。
論文より引用。VP-102または基剤による治療後、試験開始時・新たな軟属腫病変が完全に軽快した参加者の率(21日目、42日目、63日目、84日目)。
論文より引用。VP-102または基剤による治療後の病変数の変化(21日目、42日目、63日目、84日目)。
■ 有害事象は、VP-102投与群では99%(CAMP-1)と95%(CAMP-2)、基剤投与群では73%(CAMP-1)と66%(CAMP-2)に認められた。
論文より引用。有害事象。
■ 最も一般的な有害事象は、塗布部位の小水疱、疼痛、そう痒症、紅斑、かさぶたなどであった。
■ 有害事象のほとんどは軽度または中等度であった。
結論と関連性
■ 今回報告された2つの第3フェーズ試験において、VP-102は、両試験ともに試験終了時にMC病変の完全軽快を達成し統計学的に有意に優れていた。
■ 有害事象は一般的に軽度から中等度であり、塗布部位に限定されたものだった。
■ これらの結果から、FDAが承認していないものの、VP-102は、一般的な皮膚疾患であるMCに対する有効かつ安全な治療薬である可能性が示された。
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カンタリジンは軟属腫に有効。ただ…
■ カンタリジンは軟属腫に有効といえます(日本にはありません)。
■ しかし、中等度の痛みが28%(基剤1.9%)、重篤な痛みが4.3%(基剤は0%)、中等度の水疱が43%(基剤は3.8%)、重篤な水疱が5%(基剤が0%)となっています。
■ 論文中には、『The observedLSRs arewell-known, reversible reactions relatedto the pharmacodynamic response of the skin to cantharidin, a vesicant.(観察されたLSRは、カンタリジンに対する皮膚の薬力学的反応に関連した、よく知られた可逆性の反応だった)』とありますが、はたして受け入れられるものなのかな…とは思います。
■ これらが受け入れられる程度ならば、考慮できるのかもしれません。
今日のまとめ!
✅ カンタリジンは、軟属腫に有効で、3ヶ月程度で半数程度の改善が見込める。しかし、痛みや水疱形成は高率に起こりうる。