以下、論文紹介と解説です。
Hviid A, et al. Association between quadrivalent human papillomavirus vaccination and selected syndromes with autonomic dysfunction in Danish females: population based, self-controlled, case series analysis. Bmj 2020; 370:m2930.
デンマークにおける全国登録により特定された、4価HPVワクチンの接種をした10歳から44歳の女性参加者1,375,737人からの869人の自律神経機能障害(慢性疲労症候群・複合性局所疼痛症候群・体位性起立性頻拍症候群)869人に関するHPVワクチンとの関連を調査した。
目的
■ 4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種と慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome; CRPS)、体位性起立性頻拍症候群(postural orthostatic tachycardia syndrome; POTS)などの自律神経機能障害を伴う症候群との関連性を評価する。
試験デザイン
■ 母集団ベースの自己対照症例シリーズ。
セッティング
■ デンマーク全国登録のICD-10(国際疾病分類第10版)診断コードを用いて特定されたヒトパピローマウイルスワクチン接種および自律神経機能障害を伴う特定の症候群(慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性起立性頻拍症候群)に関する情報。
参加者
■ 2007年から2016年までに10歳から44歳のデンマーク生まれの女性参加者1,375,737人のコホートから、869人の自律神経機能障害症候群患者を対象とした。
主なアウトカム指標
■ 慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性起立性頻拍症候群の複合的なアウトカムの自己対照症例シリーズ率比(95%信頼区間)を年齢と季節で調整し、4 価ヒトパピローマウイルスワクチンの接種を受けた女性参加者と受けていない女性参加者を比較した。
■ また、二次解析では、慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性頻拍症候群を別々に検討した。
結果
■ 10581902 人・年の追跡期間中に、自律神経機能障害症候群(慢性疲労症候群 136 例、複合性局所疼痛症候群 535 例、体位性起立性頻拍症候群 198 例)のある女性参加者 869 例を特定定した。
■ 4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種は、接種後 365 日のリスク期間における自律神経機能障害に関するすべての症候群の複合的なアウトカムの確率を統計的に有意に増加させなかった(率比 0.99; 95%信頼区間 0.74~1.32)。
論文から引用。4価HPVワクチンは、自律神経機能障害(慢性疲労症候群・CRPS・POTS)を増加させない。
■ また、リスク期間中のそれぞれの症候群の率を統計学的に有意に増加させなかった(慢性疲労症候群(0.38; 0.13~1.09)、複合性局所疼痛症候群(1.31; 0.91~1.90)、体位性頻拍症候群(0.86; 0.48~1.54))。
結論
■ ワクチン接種が導入されると、有害事象は純粋に偶然に近い時間的関係で発生する可能性がある。
■ これらの結果は、4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種と慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性頻脈症候群との間の因果関係を、個別にも、また複合的なアウトカムとして支持するものではない。
■ 最大 32%のリスク増加を完全に除外することはできないが、この研究の統計的な力は、ワクチン接種に関連したいずれかの症候群の率がより強く増加する可能性は低いことを示唆している。
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HPVワクチンと、心配されている有害事象の関連が低いことが示されました。
■ いままで心配されていた有害事象とHPVワクチンとの関連性が低いことは、明らかになってきているといえそうです。
■ デンマークは日本と同様、一時、HPVワクチンの接種率が低下した国ですが、デンマーク政府の協力もあり接種率が回復した国です。
■ デンマークから、このようなきちんとしたデータが増えてきた理由の一つと言えましょう。
■ 日本でも、政府の対応が望まれます。
■ 現状では、『みんパピ!』のページの情報が一番わかり易いと思いますのでご参考ください。
今日のまとめ!
✅ BMJから、4価HPVワクチンと心配されている有害事象の検討が大規模に行われ、リスクがあがらないことが示された。