以下、論文紹介と解説です。
Okuno H, et al. Characteristics and outcomes of influenza-associated encephalopathy cases among children and adults in Japan, 2010–2015. Clinical Infectious Diseases 2018; 66:1831-7.
2010 年から 2015 年までに日本の感染症全国疫学調査データベースをにより報告されたインフルエンザ関連脳症(IAE)例の年齢的な特徴を調査した。
背景
■ インフルエンザ関連脳症(acute respiratory distress syndrome; IAE)は、高い死亡率を伴う重症の神経疾患を引き起こす可能性がある。
■ IAEの症例のほとんどは世界的に小児で報告されている。
■ 成人における IAE の理解は限られている。
方法
■ 2010 年から 2015 年までに、日本の感染症全国疫学調査データベースをにより報告された IAE 症例についてデータを収集した。
■ IAE症例を年齢カテゴリごとに層別化し、特徴と転帰の違いを評価するために記述統計を用いて分析した。
結果
■ IAE症例385例において、診断時年齢の中央値は7歳(範囲 0~90歳)で、283例(74%)が18歳未満だった。
■ 小児と成人(18歳以上)におけるIAE症例の季節的平均発生率は、人口10万人当たりそれぞれ2.83例および0.19例であった。
■ IAE の発生率は、優勢なインフルエンザ A ウイルス亜型による差はなかった。
■ IAEの発生頻度は学齢期(5~12歳)の子ども(38%)が最も高く、次いで2~4歳(21%)、18~49歳の成人(11%)だった。
■ けいれんを伴う症例の率は、小児の方が多かった。
■ 脳脊髄液増多の症例は小児よりも成人の方が多く(P<0.01)、特に18~49歳(17%),50~64歳(19%)で多かった.
■ 致死率は、40~64歳(17%)と65歳以上(20%)で最も高かった。
結論
■ 日本では成人と小児でIAEの臨床的特徴に違いがあることがわかった。
■ IAEの発症率は小児の方が高かったが,死亡率は成人の方が高かった。
■ 特に成人のIAE患者の予防と生存率向上のための努力が必要である。
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子どもよりもずっと少ないながら、成人でもインフルエンザ脳炎は発症しており、発症した場合は子どもよりも死亡リスクは高いようだ。
■ 成人でのインフルエンザ脳炎の発症は、小児期の1/10以下であるため、それほどイメージは高くないものの、発症した場合の死亡率は高いとまとめられます。
今日のまとめ!
✅ 成人でもインフルエンザ脳炎はあり、発症した場合は死亡率は子どもよりも高いようだ。