以下、論文紹介と解説です。
Kobayashi M, et al. Degradation of wheat allergen in Japanese soy sauce. International journal of molecular medicine 2004; 13:821-7.
醤油に含まれる小麦蛋白質が、どの製造過程で減少しているかを確認した。
■ 醤油は東アジア諸国における伝統的な発酵調味料であり、世界中で入手できる。
■ 醤油の主原料は小麦と大豆の2つであり、醤油には塩分も多く含まれている。
■ 小麦アレルギーは世界的に深刻な問題とされており、醤油のアレルゲン性を調べることは意義がある。
■ 本研究では、小麦アレルギーの小児5人の血清を用いたイムノブロット法、阻害ELISA法、直接ELISA法により、小麦アレルゲンは発酵中に醤油の塩溶性画分と塩不溶性画分ともに、アミノ酸およびペプチドに分解されIgE結合能を失うことを明らかにした。
■ さらに、国内の市販醤油10品目について、患者の血清を用いた阻害ELISA法もしくは直接ELISA法により、小麦アレルゲンは検出されなかった。
■ 醤油の醸造工程では、第一に塩不溶性小麦アレルゲンが麹の段階(カビの培養と酵素の生成)で塩水に可溶化されるようになり、第二に、(醸造過程で生成された)塩可溶性小麦アレルゲンともともと塩可溶性である小麦アレルゲンの両方が、微生物の蛋白質分解酵素によってモロミの段階(発酵)で完全に分解されていることがわかった。
■ したがって、醤油には小麦アレルゲンは含まれていないと結論づけられた。
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醤油には『ほぼ』小麦蛋白質は含まれていない。
■ 論文中では、『wheat allergens were completely degraded』と書いてあり、基本的に小麦アレルギーがあっても醤油は摂取できると考えられます。
■ ただし、アレルギーは個人差があり100%とはいいがたい場合はあり、個人的な経験では、これまで2人ほど小麦アレルギーがあって醤油の負荷試験が陽性だったお子さんがいらっしゃいます。
■ とはいえ、日常的な診療の範囲では小麦アレルギーのお子さんに対し醤油を除去する理由はほぼないといえるでしょう。
■ いっぽうで、醤油がたべられていれば小麦製品のどれが食べられますか?という質問には『それだけではわからないです』という答えるしかないということにはなります。
今日のまとめ!
✅ 小麦アレルギーがあっても、醤油を除去するケースはほぼない。