以下、論文紹介と解説です。
Foo DY, et al. Early childhood health outcomes following in utero exposure to influenza vaccines: a systematic review. Pediatrics 2020; 146.
妊娠中のインフルエンザワクチンが5歳までの健康上の問題に影響していないかを検討した研究9件に関し、システマティックレビューを実施した。
背景
■ 妊娠中のワクチン接種は乳幼児の病気を予防するための有効な戦略である。
■ しかし母親へのワクチン接種後の幼児期の健康については十分明らかになっていない。
目的
■ 子宮内でのインフルエンザワクチンに曝露した場合の小児期の健康に関する文献をシステマティックレビューをする。
データソース
■ CINAHL Plus、Embase、Medline、Scopus、Web of Scienceを検索し、2019年7月24日までに発表された関連記事を検索した。
研究の選択
■ 5歳未満の小児におけるインフルエンザワクチンへの子宮内曝露と健康アウトカムを測定したオリジナルデータを報告し英語で発表された研究を対象とした。
データ抽出
■ 2人の著者が独立して適格性を評価し、研究のデザイン、セッティング、母集団、ワクチン、アウトカム、結果に関するデータを抽出した。
結果
■ 3647件の記録が得られたが、そのうち9件が包含基準を満たしていた。
■ 研究では、感染症、アレルギー体質、自己免疫、神経発達の転帰、罹患率と死亡率のすべての原因が検討された。
■ 研究のうち2件は、パンデミックインフルエンザワクチン接種と上気道感染、消化管感染、全原因における入院に逆相関があることを報告した。
■ さらに研究のうち2件のは、一部の疾患とパンデミックもしくは季節性インフルエンザワクチン接種に、小さな増加があることを報告したが、交絡因子や多重比較を調整後は、統計学的に有意ではなかった。
限界
■ 同様に定義されたアウトカムを扱った研究の数が少ないため、メタアナリシスは不可能と考えられた。
結論
■ 生後6ヵ月以上の小児の転帰を調査した数少ない研究の結果では、子宮内のインフルエンザワクチンへの曝露と小児期の健康上の有害な転帰に関連性は認められなかった。
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妊娠中のインフルエンザワクチンは、生まれてくる子どもに対し5歳までの悪影響はないだろうということが示唆される。
■ 妊娠中のインフルエンザワクチンが、生まれていくる子どもの感染症のリスクを減らしこそすれ、悪い影響はないだろうという結果とまとめられます。
■ とはいえ、今度はインフルエンザワクチンを妊娠中のいつ接種するかが悩ましいところです。
■ 妊娠後期に接種したほうが子どもの感染を減らしますが、妊婦さんのリスクは増えるでしょう。また、できれば妊娠初期はデータが少なく避けるという考え方もあるでしょう(一般に妊娠初期は避けるものですよね)(Influenza and Other Respiratory Viruses 2019; 13:438-52.)。(あくまで個人的な考えですが)中期から出産前2週間くらいまでには…というのが私の考えです。
今日のまとめ!
✅ 妊娠中のインフルエンザワクチンが、生まれていくる子どもに感染症のリスクを減らしこそすれ、悪い影響はないといえそうだ。