以下、論文紹介と解説です。

Qamer S, Deshmukh M, Patole S. Probiotics for cow's milk protein allergy: a systematic review of randomized controlled trials. Eur J Pediatr 2019; 178:1139-49.

牛乳アレルギーが疑われる、もしくは証明された乳児の治療の補助療法としてのプロバイオティクス内服のランダム化比較試験10件に対するメタアナリシスを試みた。

背景・目的

牛乳アレルギー(Cow's milk protein allergy; CMPA)は乳児期に最も一般的な食物アレルギーであり、大きな健康上の負担と関連している。

■ プロバイオティクスには免疫調節的な特性があるから、プロバイオティクスはCMPAの治療戦略として提案されてきた。

■ 本研究では、プロバイオティクスのCMPA治療における有効性と安全性を系統的に検討することを目的とした。

 

方法

■ PubMed、EMBASE、CINAHL、Cochrane Central Library、Google scholarを2018年8月に検索し、CMPAが疑われる/証明された乳児の治療における補助療法としてのプロバイオティクス内服のランダム化比較試験(randomized controlled trials; RCT)を確認した。

■ プライマリアウトカムは、生後6カ月、12カ月、24カ月、36カ月の時点での血便の軽快とCMPに対する耐性の獲得とした。

■ セカンダリアウトカムとして、アレルギー症状(SCORAD)、成長、腸内細菌叢、副作用への影響が含まれた。

 

結果

■ バイアスリスクが低いか不明瞭なRCT 10件(845人;プロバイオティクス 422人;コントロール 423人)が含まれた。

■ メタアナリシスでは、プロバイオティクス内服は、推定されたCMPAにおける血便(87人; RR:1.45; 95%CI 0.96-2.18; p = 0.08; 証拠レベル(level of evidence; LOE)  非常に低い)の早期軽快とは関連していないことが示された。

確認されたCMPAでは、プロバイオティクスはプラセボと比較して3年後のCMP耐性率が高いことと関連した(493人;RR 1.47; 95%CI 1.17~1.84; p = 0.0009;LOE; 低)

論文から引用。プロバイオティクス内服が有効であることを示しているが…

■ 他のアウトカムについてはメタアナリシスができなかった。

■ プロバイオティクス関連の副作用は認められなかった。

 

結論

■ 質の低い限られた証拠から、プロバイオティクス内服は、CMPA児におけるCMP耐性の早期獲得と関連している可能性があることが示唆されている。

■ これらの知見を確認するためには、十分に計画された大規模試験が不可欠である。

 

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プロバイオティクスが、乳アレルギーの改善に有効かもしれないという結果ではあるものの…

■ 今回のメタアナリシスでは、『プロバイオティクスは乳アレルギーの治療に有効』とされていますが、注意が必要です。

■ というのも、この結果はCanani らの研究に強く影響を受けているからです。

■ 論文内でも、『Our conclusions are therefore influenced by the results of Canani et al.  Considering these data, the routine use of probiotics for management of CMPA cannot be recommended and their use should be limited only to clinical research.(我々の結論はCananiらの結果に影響を受けているため、注意して解釈されるべきである。これらのデータを考慮すると、CMPAの治療にプロバイオティクスを日常的に使用することは推奨できず、その使用は臨床研究のみに限定すべきである。)』と述べられています。

 

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今日のまとめ!

 ✅ プロバイオティクスは、乳アレルギーの改善に有効かもしれないというメタアナリシスの結果ではあるものの、解釈には注意が必要そうだ。

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