以下、論文紹介と解説です。
Fonseca BK, et al. Enteral vs intravenous rehydration therapy for children with gastroenteritis: a meta-analysis of randomized controlled trials. Archives of pediatrics & adolescent medicine 2004; 158:483-90.
胃腸炎と診断された15歳未満の小児 16研究(1545人)に関し、経口補液と経静脈輸液の有効性と安全性を比較した。
目的
■ 小児胃腸炎の治療における経口もしくは経静脈(intravenous; IV)による水分補給療法の相対的な有効性と安全性を検討する。
データソース
■ MEDLINE、EMBASE、Cochrane Controlled Trials Registerデータベースを検索した。
■ 研究者や専門家に連絡を取り、未発表の研究や進行中の研究を検索した。
研究の選択
■ 研究は以下の基準に基づいて選択された。
■ すなわち、1週間未満の罹病期間の胃腸炎と臨床診断された15歳未満の小児、経口および経静脈治療群による介入を行っているランダム化比較試験もしくは準ランダム化試験、もしくは重篤な有害事象の発生率、治療失敗率、治療に伴う体重増加、進行中の死亡、入院期間、治療費、治療に対する満足度のうち少なくとも1つを検討している研究である。
データ抽出
■ 対象となる研究からデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いてデータを統合した。
データの合成
■ 11カ国で実施された1545人の小児を対象とした16試験が特定された。
■ 経口補液療法を受けた小児は、経静脈補液療法を受けた小児と比較して、死亡もしくはけいれん発作を含む重大な有害事象が有意に少なく(相対リスク 0.36; 95%信頼区間[CI] 0.14-0.89)、入院期間が有意に短縮された(平均21時間; 95%CI 8-35時間)。
■ 体重の増加は2群間で差がなかった(平均 -26g; 95%CI -61~10g)。
■ 経口補液療法の全失敗率は4.0%(95%CI 3.0%~5.0%)だった。
結論
■ 小児の胃腸炎に対しては、経口補液は経静脈補液よりもより有効とは言えないにせよ、同程度の効果がある。
■ 経口または経鼻胃管ルートによる経口補液は、経静脈補液と比較して主な有害事象が有意に少なく、入院期間が短く、多くの小児で成功する。
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経口補液は静脈輸液(いわゆる点滴)と有効性は変わらず、むしろ病院への滞在時間を延長させる。
■ 経口補液に関し、有効性は経静脈輸液(いわゆる点滴)と変わらず、むしろ病院に滞在する時間は長時間となるという結果です。
■ もちろん、脱水の強い状況は別になりますが、多くのケースでは経口補液のほうが有益性が高いといえるでしょう。
■ 100%成功とは言えないことも確かですが、95%以上の確率で成功し、コクランシステマティックレビューでも静脈輸液になる率は25人にひとりという結果になっています(Cochrane Database Syst Rev 2006; 2006:Cd004390.)。
■ 経口補液の問題点として、『何を』『どれくらいの量』『どれくらいの間隔で』飲ませればいいのかが具体的にはわかりづらいという点が挙げられます。
■ また、いわゆる経口補液はやや飲みづらいので、軽症であれば100%りんごジュースと混合する方法もあります。
■ 以下のブログで、その点が具体的にわかるEXCELシートを紹介していますのでご参考まで…
■ なお、『グルコースベース』だけでなく『ポリマーベース(米や小麦)』の補液を使う方法もあります。イメージ的には重湯やお粥に食塩を足す感じですね(Cochrane Database Syst Rev 2016; 12:Cd006519.)。
今日のまとめ!
✅ 経口補液は、経静脈輸液と有効性は変わらない。