以下、論文紹介と解説です。

Wang Y, Li X, et al. Probiotics for prevention and treatment of respiratory tract infections in children: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Medicine 2016; 95.

プロバイオティクスが急性呼吸器疾患(風邪を含む)を予防するかどうかを検討した23試験(6269人)に対するメタアナリシスを実施した。

背景

呼吸器感染症(Respiratory tract infections; RTI)は小児における主な健康上の問題の一つである。

■ プロバイオティクスは腸内をコロニーを作り、宿主の腸内微生物バランスに影響を与える生菌である。

■ エビデンスが蓄積されてきており、プロバイオティクスの摂取がRTIの発生率を減少させたり、変更したりする可能性があることが示唆されている。

■ そこで、小児のRTIに対するプロバイオティクス摂取の効果を調査するために、ランダム化比較試験(randomized controlled trials; RCT)からのデータに関するシステマティックレビューを行った。

 

方法

■ MEDLINE/PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceを用いて、小児のRTIに対するプロバイオティクスの効果を検討したRCTを系統的に検索した。

■ アウトカムには、少なくとも1回のRTIのエピソードを経験した数、RTIの期間、1人あたりの病気の日数、感染による学校や保育園の欠席などが含まれた。

■ プールされた相対リスク、平均差(mean difference ; MD)と、95%信頼区間( mean difference ; CI)を計算するためにランダム効果モデルを使用した。

 

結果

■ 6269人を対象とした計23試験がシステマティックレビューの対象となった。

■ いずれの試験もバイアスリスクが高かった。

■ アウトカムのエビデンスの質は中程度だった。

■ 被験者の年齢は新生児から18歳までにわたった。

■ メタアナリシスの結果、プロバイオティクス摂取は少なくとも1回のRTIエピソードのある小児数を有意に減少させることが示された(RCT 17件; 4513人; 相対リスク0.89; 95%CI 0.82~0.96; P = 0.004)

プロバイオティクスを摂取した小児は、プラセボを摂取した小児と比較して、1人当たりのRTIの日数が少なく(RCT 6件; 2067人; MD -0.16; 95%CI -0.29~0.02; P = 0.03)、園/学校を欠席した日数が少なかった( RCT 8件; 1499人; MD -0.94; 95%CI -1.72~-0.15; P = 0.02)

■ しかし、プロバイオティクス介入群とプラセボ群の病気期間に統計的に有意差はなかった(RCT 9件; 2817人; MD -0.60; 95%CI -1.49~0.30; P = 0.19)。

 

結論

■ 利用可能なデータに基づき、RCTの安全性プロファイルを考慮に入れると、プロバイオティクス摂取は、小児におけるRTIの発生率を減少させるための実行可能な方法であるように思われる。

 

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プロバイオティクスが、風邪を含む急性呼吸器疾患の予防に有効という結果でしたが…そのまま使うには注意が必要そうです。

■ プロバイオティクスが風邪を含む呼吸器疾患の予防に有効という結果です。

■ とはいえ、(この手の研究に共通する問題ではありますが)プロバイオティクスの株、投与方法、投与量、フォローアップ期間が、研究によってまちまちでした。

■ そしてこれらは、日本で行われた研究ではなく、研究で使われた菌株が日本人にあっているかどうかも不明です。

■ ですので、『○○菌が効く』というCMは、すこし眉唾で聞きつつ、『効けばラッキー』くらいのスタンスで良いのではと思います。

 

■ しかも、有意に風邪の回数が減るものの11%では…やはり、実感を得るには難しそうです。

■ 個人的には、結局しっかり睡眠を取るのが一番有効な感じがします。

 

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今日のまとめ!

 ✅ プロバイオティクスが風邪を含む急性呼吸器疾患の予防に有効とは言えそうだが、臨床的に有効な方策かどうかは注意を要しそうだ。

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