以下、論文紹介と解説です。

Lee W-M, et al. Human rhinovirus species and season of infection determine illness severity. American journal of respiratory and critical care medicine 2012; 186:886-91.

出生コホート研究(COAST試験)に登録された289人中285人に対し、生後12か月までのライノウイルス感染と症状を検討した。

理論的根拠

ヒトライノウイルス(Human rhinoviruses; HRV)は、無症候感染、風邪、重症の下気道疾患など、さまざまな臨床症状を引き起こす約 160 種類のウイルスから構成されている。

 

目的

■ HRV感染症の重症度に影響を与える要因を特定する。

 

方法

■ 出生コホートに参加し、少なくとも 1 回の HRV 感染症に罹患した乳児 209 人からプロスペクティブに収集した、鼻腔洗浄液 1,445検体から、HRV の種とタイプを判定した。

■ 中等症から重症の疾患(moderate to severe illnesses; MSI)を特定するために、各疾患の発症時にアンケートを実施した。

 

測定値と主な結果

■ HRV 感染 670 件が確認され、そのうち 519 件は単独感染(HRV 1 種類のみ)だった。

管理人注
予定内での検査で、乳児1人当たりのライノウイルス感染数は12.2回(95%信頼区間[CI] 8.7~18.9)で、無症候性が49%、軽症が46%、MSIが5%だったそうです。半数は『無症状の感染』と言えます。

■ これら519種は3種93タイプに属しており、A 型が 49タイプ、B 型が 9タイプ、C 型が 35タイプだった。

HRV-A型(オッズ比; 8.2)、HRV-C型(オッズ比 7.6)は、HRV-B型に比べてMSIを引き起こす可能性が高かった

論文から引用。ライノウイルスA・C型が、B型より中等症以上になる可能性が高い。

■ さらに、春と秋に季節的な有病率のピークがあるのとは対照的に、夏に比べて冬の時期には、HRV 感染症が MSI を引き起こす可能性が 5~10 倍高かった(P < 0.0001)

論文から引用。流行は春と秋にピークがあるが(図A)、MSIは冬のほうが多い(図B)。

■ 宿主の MSI への感受性に有意差がある場合(P = 0.004)、HRV による MSI の株特異的な発生率は 1% 未満から 20% 以上の範囲だった。

 

結論

■ 乳児期の HRV 感染症の重症化リスクは、HRV の種やタイプ、季節、宿主の感受性に関連する因子によって決定される。

■ これらの知見から、HRVに対抗する戦略は HRV-A や-C 種に焦点を当てるべきであることが示唆され、寒冷期におけるウイルスの有病率とは無関係に、季節的に HRV の重症化が増加するメカニズムを明らかにするためには、さらなる研究が必要であることが明らかになった。

 

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乳児期のライノウイルス感染は春・秋に起こすことが多いが、冬のほうが中等症以上に発展する可能性は高い。

■ もちろん、ライノウイルスの多くは『無症状』『軽症』です。ですので、迅速検査はありません。あくまで研究目的の検査でおこなわれています。

■ 先行研究で、乳児期の風邪の罹患数が年間6回程度という報告がありますが(もちろん個人差は大きいです)、その数に沿うような結果のようです。

■ とはいえ、ライノウイルス感染は喘息発作も引き起こしますし、まだしばらくは油断できないという印象がありますね。

今日のまとめ!

 ✅ 乳児のライノウイルス感染症は、春と秋にピークがあるが、悪化するのは冬季であるようだ。

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