以下、論文紹介と解説です。
O’Grady K-AF, et al. Chronic cough postacute respiratory illness in children: a cohort study. Archives of Disease in Childhood 2017; 102:1044-8.
急性呼吸器疾患で咳嗽を主訴に救急外来を受診した15歳未満の小児839人が、28日後にどれくらい咳嗽が持続しており、最終的な診断が何だったかを前向きに検討した。
目的
■ 亜急性期から慢性期への移行期(4週間以上)の持続性咳嗽の病因に関するデータは少ない。
■ そこで、(1)急性呼吸器疾患(acute respiratory illness; ARI)後の慢性咳嗽の有病率を明らかにし、(2)慢性咳嗽のある児の診断結果を明らかにすることを目的とし検討した。
研究計画
■ プロスペクティブコホート研究。
セッティング
■ ブリスベン(オーストラリア)にある小児救急治療部(emergency department; ED)。
患者
■ 咳嗽を伴うARIのある15歳未満の小児。
介入
■ 28日目に咳が持続していた児を28日間(毎週)追跡し、28日目に咳が持続していた児を小児呼吸器専門医がレビューした。
主要評価項目
■ 28日目の咳嗽の持続と呼吸器専門医の診断。
結果
■ 2586人がスクリーニングを受け776人(30%)が不適格であり、839人(年齢中央値2.3歳; 範囲0.5ヶ月~14.7歳; 男性60%)が2年間登録された。
■ 大多数の小児(627人; 74.8%)は登録時の咳嗽期間が7日未満だった。
■ 28日目に、839人中171人(20.4%; 95%CI 17.7~23.1)は、登録時の咳嗽持続期間にかかわらず咳が持続していた。
■ 咳嗽は171人中59人(34.5%)で湿性、171人中45人(26.4%)が乾性、171人中28人(16.1%)で変動性だった。
■ これら117 人のうち、117人(68.4%)が小児呼吸器専門医の診察を受けた。
■ 新規の重篤な慢性肺疾患と診断されたのは117人中36人(30.8%)であり,遷延性細菌性気管支炎 (protracted bacterial bronchitis; PBB)と診断されたのは117人中55人(47.0%)だった。
論文から引用。117人の内訳(診断名重複あり)
百日咳は1名のみ(登録時・専門医による診察時の鼻腔内PCR陽性)、マイコプラズマ陽性はゼロだったそうです。
再発性上気道感染症と診断されたのは14/117人(12.0%)で、肺炎は4人、誤嚥性疾患は4人(これまで3人は診断なし)でした。
117人の小児のうち40人(34.2%)が1つ以上の慢性呼吸器疾患があり、喘息(17/117人、14.5%、うち9人が新規)、気管支炎(13/117人、11.1%、うち12人が新規)、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(4/117人、3.4%)、誤嚥性疾患(4/117人、3.4%)、気管支拡張症(4/117人、3.4%)でした。
結論
■ 慢性咳嗽がARI後に発症した場合、特に両親が咳嗽の長期化や再発の既往を報告している場合には、臨床的な検討が必要である。
■ 咳嗽があり急性期にEDに受診した小児の親は、慢性咳嗽の発症について助言されるべきである。
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咳は思ったより続く。そして思ったほど百日咳やマイコプラズマは多くはなく『遷延性細菌性気管支炎』が多いという結果だった(注意点あり)。
■ 咳はおもったより長く続くと言え、4週間でも2割は残存することになります。
■ 遷延性細菌性気管支炎に関しては、まだ十分な認知がされていない病名ですが、『小児の咳嗽診療ガイドライン2020』にもかなり強調されるようになりました。
■ もちろん最初から抗菌薬が必要というわけではありませんが(むしろ害が大きい)、頭の片隅にいれておくべきでしょう。
■ ただし、この論文にも名前が挙がっているMarchantは、遷延性細菌性気管支炎を多く報告しており、やや偏っている可能性は否定できません。
■ 研究グループによっても、慢性咳嗽診断の内訳がことなるという報告もあり、なかなか難しい点でもありましょう。
今日のまとめ!
✅ 救急外来に『咳』主訴で受診した子どもの咳は、4週間後でも2割は残存しており、『遷延性細菌性気管支炎』が多いという結果だった。