以下、論文紹介と解説です。
Cortellini G, et al. Improvement of shrimp allergy after sublingual immunotherapy for house dust mites: a case report. Eur Ann Allergy Clin Immunol 2011; 43:162-4.
エビとダニに対するアレルギー(エビに対してはアナフィラキシー)を持つ15歳男児に、トロポミオシンの含有された舌下免疫療法を12ヶ月実施した。
■ エビアレルギー患者に対するチリダニ特異的免疫療法の妥当性はいまだに不明である。
■ そこで、エビによるアナフィラキシー症状とチリダニによる喘息を併発した免疫学的モデルとして、トロポミオシンへの強い感作がある例を提示した。
軽症喘息と鼻炎、エビや魚介類に対するアレルギーを併発している15歳男児に対し、血清にトロポミオシン(エビの主要アレルゲン)特異的IgE抗体を確認し、ダニ用舌下免疫療法用の製剤にもトロポミシンがわずかに含有されている(トロポミオシン平均含有量1.6μg/mL)ことを確認したうえで、舌下免疫療法(SLIT)を開始しています。最初はエビに対するアナフィラキシーを持っていたのですが、12ヶ月後、症状/投薬スコアは40%低下し、喘息と鼻炎の薬物量も40%減少、エビ1尾を経口負荷試験したところ,全身症状はなく口腔アレルギー症候群のみだったそうです。※SLIT用の製剤は、Anallergo(Florence®)という、日本の製剤とは異なります。
■ 高用量のトロポミオシンが含有されたチリダニ免疫療法により、チリダニに対する呼吸器症状の改善とエビの食物負荷の改善が見られたことから,トロポミオシンに対する食物アレルギー患者へのダニ免疫療法の有効性は用量依存性があるのではないかとの仮説が示唆された。
※CReSSセミナー中のZOOMの個人的なメッセで、何人かの先生方から『ブログをみています』『Twitter見てます』などいただきました。ありがとうございます。
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まだ、ダニ舌下免疫療法がエビアレルギーに効果があるかどうかの結論を出すことはできない。このような仮説生成から、次の研究が生まれ、すこしずつ医学が発展していく。
■ チリダニに対する舌下免疫療法はすでに普及期に入っています。
■ では、この舌下免疫療法により、今いらっしゃるエビアレルギーの患者さんが改善するのでしょうか?
■ まだ『全くわからない』といえます。
■ その結論をだすためには、膨大な先行研究から仮説を生成し倫理的に整合した現実的な研究計画をたて、場合によっては研究費を確保し、長い期間をかけて研究を走りきり、正しい統計手法で確認して論文化し、査読に通って公表するという段階を踏む必要性があります。
■ 世の中にある研究結果は、そのようなステップを踏んでいる研究がほとんどです。
■ コロナ禍で、『ぼくのかんがえたさいきょう理論(揶揄する言い方で好ましくないでしょうが)』が多く見受けられますが、結局は『仮説生成』の段階であるといえます。
■ 今回、CReSSに参加して、そのステップの険しさを想像しながら多くの先生方の熱意を感じることができました。
今日のまとめ!
✅ ダニ舌下免疫療法を行って、エビアレルギーが改善したという報告があるものの、まだまだ研究が必要である。