以下、論文紹介と解説です。
Miyawaki A, Tabuchi T, Tomata Y, Tsugawa Y. Association between Participation in Government Subsidy Program for Domestic Travel and Symptoms Indicative of COVID-19 Infection. medRxiv 2020:2020.12.03.20243352.
webによるアンケート調査に回答した25,482人(平均年齢 48.4歳)のうち3,289人(12.9%)が『GoToトラベル』キャンペーンに参加している集団において、キャンペーン参加により新型コロナ感染症を示唆する症状(高熱、咽頭痛、咳嗽、頭痛、嗅覚/味覚障害)を起こすリスクが高くなるかを検討した。
重要性
■ 新型コロナウイルス感染症(coronavirus 2019; COVID-19)の流行による景気低迷への対策として、多くの国で旅行などの経済活動や飲食店の利用に対する金銭的なインセンティブの導入や検討が行われている。
■ 日本では、旅行産業の活性化を目的に、2020年7月から旅行費用の最大50%を補助する大規模な全国規模の国費助成制度を実施している。
■ しかし、このような渡航費補助金の支給がCOVID-19パンデミックにどのような影響を与えたのかは不明である。
目的
■ 日本の国内旅行に対する政府補助金への参加とCOVID-19感染症の発生率との関連を調査する。
研究デザイン、セッティング、参加者
■ 2020年8月25日から9月30日に日本国内で実施された大規模なインターネット調査のデータを用いて、補助金を利用した人がCOVID-19感染症を示唆する症状を呈する可能性が高いかどうかを検討した。
曝露の有無
■ 国内旅行の補助金制度への参加。
主なアウトカムと測定
■ 調査期間中の過去1ヶ月以内に、COVID-19感染を示唆する5種類の症状(高熱、咽頭痛、咳嗽、頭痛、嗅覚/味覚障害)。
結果
■ 回答者25,482人(女性50.3%[12,809人]、平均年齢[SD] 48.4 [17.4歳])のうち、3,289人(12.9%)が調査時点で補助金プログラムに参加していた。
■ 潜在的な交絡因子を調整した結果、補助金制度参加者は非参加者と比較して、高熱(調整比率 [adjusted rate] 参加者4.8% vs 非参加者3.7%;調整オッズ比[adjusted odds ratio; aOR]1.90;95%CI 1.40-2.56; p<0.001)、咽頭痛(20.0% vs 11.3%; aOR 2.13; 95%CI 1.39-3.26; p=0.002)、咳嗽 (19.2% vs 11.2%; aOR 1.97; 95%CI 1.28-3.03; p=0.004)、頭痛 (29.4% vs 25.5%; aOR 1.26; 95%CI 1.09-1.46; p=0.005)、嗅覚/味覚障害 (2.6% vs. 1.7%; aOR 2.01; 95%CI 1.16-3.49; p=0.01) の発生率が高いことが判明した。
結論と関連性
■ 国内旅行のための政府補助金への参加者は、COVID-19感染を示唆する症状の発生率が高かった。
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まだ査読前の論文であり結論はまだ確定していないが、重要な示唆がある報告といえそうだ。
■ 査読前・プレプリントの報告であり、さらにはアンケート調査による研究ですので、まだこれだけで結論を出すことはできません。
■ そして症状からみているために、新型コロナ感染症だけではないともいえます。
■ ただ、『GoToトラベル』キャンペーンにより、風邪症状を来しやすくなる可能性はあり、重要な研究結果といえましょう。
■ もし旅行を考える場合は、『三密を避け』『適切にマスクをし』『手洗いを励行する』ことが重要だと思われます。
今日のまとめ!
✅ まだ結論を急ぐことはできないが、『GoToトラベル』キャンペーンに参加する場合は感染リスクが高くなる可能性があり、感染予防策を十分するべきと思われる。