以下、論文紹介と解説です。

Roduit C, et al. Increased food diversity in the first year of life is inversely associated with allergic diseases. Journal of allergy and clinical immunology 2014; 133:1056-64. e7.

出生コホート研究Protection Against Allergy Study in Rural Environments/EFRAIM研究に参加した児8356 人に関し、離乳食の導入とアレルギーの発症の関連を調査した。

背景

■ アレルギーの発症における食事要因の役割について、特に乳幼児の栄養習慣とアレルギー疾患に潜在的に関連があるかどうかが議論の対象となっている。

■ 先行研究では、生後1歳までに導入された食の多様性を高めることでアトピー性皮膚炎のリスクが低下したことが報告されている。

 

目的

■ 本研究では、逆因果関係に配慮しながら、生後1歳までの離乳食導入と、喘息・アレルギー性鼻炎・食物アレルギー・アレルゲン感作の発症との関連を検討した。

■ さらに、食の多様性とT細胞マーカーや抗体のIgEへのアイソタイプの切り替えを反映したCε germline transcriptの遺伝子発現との関連を、6歳時に測定して解析した。

Cε germline transcript
 B 細胞から産生される免疫グロブリンに関し、可変領域と定常領域に分けられ、IgE の場合は Cμの代りに Cεが配列するように遺伝子の繋ぎ換えを起こす必要があります。抗体のアイソタイプが IgM から IgG,IgE,IgA に切り換わることをクラススイッチ組換えといいます。クラススイッチ組換えは蛋白に翻訳されない germline transcriptsが産生されることから始まります。Cε germline transcriptの発現が減ったということはアレルギーへの流れが減ったといえます。

 

方法

■ 出生コホート研究であるProtection Against Allergy Study in Rural Environments/EFRAIM に参加した児8356 人が含まれた。

■ 食習慣は、1歳までに毎月の日記により保護者によって報告された。

■ 環境要因やアレルギー性疾患に関するデータは、出生時から6歳までに実施したアンケート調査からあつめられた。

 

結果

生後1歳までに導入された離乳食の多様性は、用量反応効果を伴って喘息と逆相関した(追加の食品項目を導入するごとに調整オッズ比 0.74[95%CI 0.61-0.89])

■ 食物アレルギーや食物感作についても同様の効果が観察された。

■ さらに、食の多様性の増加は、forkhead box protein 3発現の増加やCε germline transcriptの発現減少と有意に関連していた

forkhead box protein 3
forkhead box protein 3は、FOXP3のことです。制御性T細胞のマスター転写因子で、Tregの分化・機能発現・分化状態の維持すべてにおいて必須の役割を担うため、この場合、発現がおおくなるということはアレルギーを抑えるほうに働くといえます。

 

結論

■ 生後1歳までの食の多様性の増加は、喘息・食物アレルギー・食物感作に対する保護効果があり、レギュラトリーT細胞のマーカーの発現増加と関連している可能性がある。

 

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食のバリエーションをはやめに考えるとアレルギーの発症リスクを低下させるかもしれないという結果。

■ コホート研究の結果ですので確定ではありませんが、離乳食のバリエーションを広げることはひとつの方策かもしれません

■ でも、『食べないときは食べない』んですよね…悩ましいところです。

 

今日のまとめ!

 ✅ 1歳までの離乳食のバリエーションを多くするほど、喘息発症リスクが下がるのかもしれない。

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