以下、論文紹介と解説です。

Chinthrajah RS, et al. Sustained outcomes in oral immunotherapy for peanut allergy (POISED study): a large, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 study. Lancet 2019; 394:1437-49.

7~55 歳のピーナッツアレルギーのある参加者を、ピーナッツ蛋白質4000 mg(ピーナッツ換算10粒以上)を104週間摂取したあと中止する群(ピーナッツ0 群)、ピーナッツ蛋白質4000 mgを104週間摂取したあと52 週間毎日 300 mg 摂取する群(ピーナッツ300 群)、オーツ麦粉末を摂取する群(プラセボ群)にランダム化し、ピーナッツアレルギーの再燃率を評価した。

背景

■ ピーナッツアレルギーには除去食が推奨されている。

■ そこで、成人や小児を対象とした長期ランダム化試験におけるピーナッツアレルギー経口免疫療法(oral immunotherapy; OIT)の持続的効果を評価した.

 

方法

■ このランダム化二重盲検プラセボ対照第 2フェーズ試験では、スタンフォード大学のSean N Parker Center for Allergy and Asthma Research (Stanford, CA, USA) に、7~55 歳のピーナッツアレルギーのある参加者を登録し、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(double-blind, placebo-controlled, food challenge; DBPCFC; ≤ピーナッツ蛋白質500mg 以下)、皮膚プリックテスト(skin-prick test; SPT)陽性(陰性対照群よりも膨疹径が5mm以上大きい)、ピーナッツ特異的IgE抗体価が 4kU/L以上である7~55 歳のピーナッツアレルギーを対象とした。

■ 参加者は、コンピュータシステムを用いた 2×2 ブロックデザインでランダム化された(2.4:1.4:1)。

■ すなわち、104 週目まで ピーナッツ蛋白質4000 mgを投与し、その後ピーナッツの投与を中止する群(ピーナッツ0 群)、104 週目まで ピーナッツ蛋白質4000 mgを投与し、その後52 週間毎日 300 mg のピーナッツ蛋白質を摂取する群(ピーナッツ300 群)、オーツ麦粉末を摂取する群(プラセボ群)である。

ピーナッツ蛋白質4000mgに対するDBPCFCは、試験開始時と104週目、117週目、130週目、143週目、156週目に実施された。

■ 製薬者は、コンピュータリストに基づいて治療をランダム化した。

■ ピーナッツもしくはプラセボ(オーツ麦)粉末を経口投与されたが、参加者と研究チームは、味をマスクするために、ピーナッツ粉末に類似した外観と感触のオーツ麦粉末と鼻クリップを使用することで、全体を通してマスキングした。

■ 統計担当者もマスキングされた。

■ プライマリエンドポイントは、104週目と117週目の両方で累積投与量4000mgのDBPCFCをパスした参加者の率だった。

■ プライマリ有効性解析はITT集団で行われた。

■ 安全性はITT集団で評価された。

■ この試験は ClinicalTrials.gov, NCT02103270 に登録されている。

 

結果

■ 2014年4月15日から2016年3月2日までに、評価対象152人のうち、ピーナッツ0群 60人、ピーナッツ300群 35人、プラセボ群 25人にランダム化された120人を登録した。

ピーナッツ0群の21人(35%)とプラセボ群の1人(4%)が、104週目と117週目の両方で4000mgの負荷試験をパスした(オッズ比 [OR] 12.7; 95%信頼区間 1.8~554.8; p=0.0024)

論文より引用。ピーナッツ蛋白質300mgでも、すこしずつ食べられなくなる率が上がっている。

■ 試験全体を通して最も多かった有害事象は軽度の胃腸症状であり、120人中90人(ピーナッツ0群 60人中50人、ピーナッツ300群 35人中29人、プラセボ群 25人中11人)に認められ、皮膚症状は120人中50人(ピーナッツ0群 60人中26人、ピーナッツ300群 35人中15人、プラセボ群 25人中9人)に認められた。

■ 有害事象は、全群において時間の経過とともに減少した。

■ 3年間の試験中に、ピーナッツ群の参加者2人が重篤な有害事象を経験した。

■ 60人のうち8人(13%)が156週目にDBPCFCを通過したピーナッツ0群は、試験開始時のピーナッツ特異的IgG4/IgE比が高く、Ara h 2 IgEと好塩基球活性化反応が低かったことが、sustained unresponsiveness.(SU)と関連していた。

論文より引用。Arah2特異的IgE抗体価/ピーナッツ特異的IgE抗体価の比が高いと、免疫療法の失敗率が高い。

■ 治療関連の死亡は起こらなかった。

 

解釈

■ この研究では、ピーナッツOITはピーナッツアレルギーのある患者にピーナッツ蛋白質4000mgに対する感作性を低下させる可能性があるが、中止するか、もしくは1日300mgまで減量することで、ピーナッツに対する臨床的反応性が再度上昇する可能性が高くなることを示唆した。

■ 試験開始時の血液検査は117週目の治療成績と相関したため、この研究は、この治療のための最適な患者の選択に役立つかもしれない。

 

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ピーナッツに対する経口免疫療法で、10粒以上食べられるようになっても、中断すると大部分が摂取維持ができなくなる。ピーナッツ1粒でもある程度維持できるが、やはり一部は摂取できなくなる。

■ ピーナッツアレルギーが疑われた9~36か月の児37人に対する先行研究では、経口免疫療法の負荷量として300mgと3000mgで有効性に差はありませんでした(300mgのほうがむしろ有効な印象)。

■ また、少ない量での免疫療法で有効とする日本からの報告もあります。

■ そこで個人的には、ピーナッツの経口免疫療法の維持量も1粒(ピーナッツ蛋白質300mgに相当)で、維持に関してはおおむね良いのではないかと考えていました。

 

■ しかし、今回のPOISED試験の結果をみると、300mgを継続して摂取していても一部は食べられなくなってしまうということになります。

■ Discussionでは、今回の研究内では年齢による差はなかったと述べられていますが、7~55 歳という今回の参加者と、先行研究(9~36ヶ月)との年齢に差があることも関連しているかもしれません。

■ 治療ルートは異なりますが、ピーナッツ経皮免疫療法が11歳以降になると有効性が乏しくなることが報告されています。ピーナッツ経口免疫療法は、年齢の影響を強く受けるのかもしれません。

 

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今日のまとめ!

 ✅ ピーナッツ経口免疫療法で10粒以上摂取できるようになっても、少量で摂取継続したほうが除去するよりも維持しやすいものの、ピーナッツ1粒の維持量では一部が摂取できなくなるといえる。

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