以下、論文紹介と解説です。

Madewell ZJ, et al. Household Transmission of SARS-CoV-2: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Network Open 2020; 3:e2031756-e.

新型コロナウイルス感染に関する家庭内の二次感染率を検討した計54研究(77758人)のメタアナリシスを実施した。

重要性

■ 家庭などの密な室内環境は、新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2; SARS-CoV-2)の感染リスクが高い環境である。

 

目的

■ SARS-CoV-2の家庭内感染のエビデンスをいくつかの共変量で解析し、他のコロナウイルスと比較する。

 

データソース

■ PubMedにより2020年10月19日まで検索した。

■ 検索語は、SARS-CoV-2もしくはCOVID-19であり、二次感染率(secondary attack rate)、家庭内感染(household)、密な接触( close contacts,)、接触感染(contact transmission)、接触感染率( contact attack rate)、家族感染(family transmission)を含むものとした。

 

研究の選択

■ 世帯の二次感染率を推定するためのオリジナルデータを持つ論文をすべて対象とした。

■ 個々の世帯や、世帯における二次感染率が報告されていない密な接触に焦点を当てた症例報告は除外した。

 

データの抽出と合成

■ 最尤推定モデルを用いてメタアナリシスを行い、各研究のランダム効果を用いて、解析された各サブグループの二次感染率の推定値と95%CIを得た。

■ 曝露のタイプ間の比較を行うために、研究をランダム効果として扱い、曝露のタイプをfixed moderatorとした。

■ PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)報告ガイドラインに従った。

 

主なアウトカムと測定

■ SARS-CoV-2の二次感染率、共変量(世帯または家族との接触、症例の症状、成人や子どもとの接触、性接触、症例との関係、成人または子どもの例、性別、世帯内の接触者数)、他のコロナウイルスにおける二次感染率別に集計した。

 

結果

家庭での二次感染を報告した77758人、計54件の関連した研究が特定された。

推定された家庭内二次感染率は 16.6%(95% CI 14.0%~19.3%)であり、SARS-CoVの二次感染率(7.5%; 95% CI 4.8%~10.7%)やMERS-CoVの二次感染率(4.7%; 95% CI 0.9%~10.7%)よりも高かった

世帯における二次感染率は、無症候性(0.7%; 95%CI 0%-4.9%)よりも症状のある(18.0%; 95%CI 14.2%-22.1%)ほうが、子ども(16.8%; 95%CI 12.3%~21.7%)よりも成人(28.3%; 95%CI 20.2%-37.1%)への接触の方が、(配偶者以外の)他の家族との接触(17.8%; 95%CI 11.7%~24.8%)よりも配偶者との接触(37.8%; 95%CI 25.8%~50.5%)の方が、3人以上の世帯(22.8%; 95%CI 13.6%~33.5%)より接触者が一人の世帯(41.5%; 95%CI 31.7%~51.7%)の方が高かった。

論文より引用。成人のほうが子どもよりも二次感染リスクが高い。

 

管理人注
接触者が1人しかいない世帯の方が接触者が2人以上いる世帯よりも二次感染リスクが高かったといのは、1世帯あたりの総人数よりも、密集度や1人あたりの居住面積が重要であることを示唆しているのかもしれないと考察されています。実際に、世帯の密集度(例えば、部屋あたりの人数)がインフルエンザ感染リスクと関連していることが報告されています。

 

結論と関連性

■ 本研究の結果は、感染が疑われるもしくは発症が確認された人が家庭内で隔離されるように依頼されていることを考慮し、家庭はSARS-CoV-2の重要な感染の場であることを示唆している。

 

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帰省により、家族内で感染するリスクは高くなります。そして発症症例が確認されるまでの2日間の感染リスクが高く(事前にわからない可能性がある)、身体的接触・乗り物の共有・居住空間の共有・食事の共有により、二次感染リスクは高くなります。

帰省するということは世帯の密集度が増えることを意味し、感染リスクが大きく増加することを示唆しているといえます。

 

■ そして、報告内にあるように『接触が増えるほど感染リスクは増加』します。

■ 『Contact frequency with the index case was associated with higher odds of infection, specifically ≥5 contacts during 2 days before the index case was confirmed, ≥4 and 1–3 contacts (within 1 m), or frequent contact.(症例との接触頻度は、特に発症症例が確認される 2 日間の接触回数が 5 回以上、25 回以上、1~3 回(1 m 以内)の接触回数が 4 回以上、28 回以上、頻繁な接触回数が感染のオッズの高さと関連した)』と記載されています。

 

■ そして、身体的接触、乗り物の共有、居住空間の共有、食事の共有も感染と関連したとされています(Physical contact, sharing a vehicle, sharing a living room, and sharing a meal, were also associated with infection, but eating with separate tableware was not.)。

■ さらに、『individuals aged >60 years were most susceptible to SARS-CoV-2 infection(60歳以上の人がSARS-CoV-2に最も感染しやすいことが報告されている)』とされています。

 

■ つまり、帰省するということは、世代が上(60歳以上であることが多いでしょう)の感染リスクが高い方と、密な状況を、居住空間や食事を共有するということです。

 

■ 私も、できれば帰省したいです。しかし、医療従事者であることも大きな理由ではあるものの、やはり家族への感染リスクはできるだけ低くしたいです。ですので、帰省は控える予定です。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 新型コロナウイルスの家庭内における感染リスクはSARSやMERSよりも高いと推定される。

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