以下、論文紹介と解説です。

Yamamoto-Hanada K, et al. Allergy and immunology in young children of Japan: The JECS cohort. World Allergy Organization Journal 2020; 13:100479.

日本における多施設前向き出生コホート研究であるエコチル調査(JECS)に参加した妊婦103060人から出生した児のアレルギー疾患の有病率を調査した。

背景

■ 疫学的特徴を把握することは、疾病の負担を記録し、予防対策、臨床介入、政策などのヘルスケアサービスをデザインするために不可欠である。

■ そして、アレルギー疾患や免疫疾患の疫学は、地理的・民族的に大きな差がある。

■ 北米やヨーロッパでは様々なデータがあるが、アジアのアレルギー・免疫疾患の疫学は十分に記録されていない。

 

目的

■ 日本の年少児におけるアレルギー・免疫疾患の疫学的特徴を明らかにする。

 

方法

■ これは全国的な多施設前向き出生コホート研究である、Japan Environment and Children's Study (JECS)である。

妊娠中の一般女性 103,060 人が登録された。

■ 年少児のアレルギーや免疫学的アウトカムをアンケートデータを用いて評価した。

 

結果

■ 保護者が報告した即時型食物アレルギーの有病率は、1 歳時で 7.6%、2 歳時で 6.7%、3 歳時で 4.9%だった。

論文から引用。保護者が報告し『医師が診断した』食物アレルギーの有病率。1歳、2歳、3歳でそれぞれ5.9%、9.9%、5.2%。抄録では保護者の報告であるため、数値が異なる。

■ 卵アレルギーが最も多く(1歳時の有病率5.4%)、次いで牛乳と小麦のアレルギーだった。

論文から引用。食物アレルギーで多い順に、卵・乳・小麦となる。

■ いくつかのパターンのアレルギー症状クラスターが確認された。

論文から引用。アレルギー症状の組み合わせで最も多かったのは1歳時のアトピー性皮膚炎・喘鳴(8.6%)、次いで喘鳴とアトピー性皮膚炎(7.43%)だった。3歳時のアレルギー症状の組み合わせは、喘鳴・鼻炎(9.81%)が最も多く、次いで鼻炎・湿疹(8.61%)、喘鳴・鼻炎(3.54%)だった。

保護者が報告し医師が診断したIgE非依存性の食物消化管アレルギーが0.5%の乳児にみられた

■ 対照的に、保護者が報告した食物消化管アレルギーは小児の1.4%に影響した。

■ 川崎病は、1 歳と 3 歳でそれぞれ 0.3%、 0.4%の小児に影響していた。

■ 原発性免疫不全症は、3歳時点で0.005%の児に影響していた。

 

結論

■ これらのデータは、アレルギー疾患、川崎病、原発性免疫不全症の年齢別有病率など、日本人の年少児のアレルギーと免疫の重要な疫学的特徴を示している。

 

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日本で大規模におこなわれた出生コホート研究からの重要な結果。

■ アンケート調査が中心なので、正確性に関する限界はありますが、重要な結果と思われます。

■ 新生児乳児消化管アレルギーに関し、発症率は1000人にひとりくらいと記憶していましたが、今回のコホートでは、日本の年少児の0.5%となっていました。200人にひとりになり、やや多くなるようです。

今日のまとめ!

 ✅ 日本の大規模出生コホート試験から、アレルギー疾患の有症率が報告された。

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