以下、論文紹介と解説です。

Oliver J, et al. Group A Streptococcus pharyngitis and pharyngeal carriage: A meta-analysis. PLoS Negl Trop Dis 2018; 12:e0006335.

培養検査で確認した咽頭炎、血清学的に確認した咽頭炎、無症候性咽頭炎キャリアの保菌率を、研究285件から推定した。

目的

A群溶連菌(Group A Streptococcus; GAS)咽頭炎の抗生物質治療は急性リウマチ熱(acute rheumatic fever; ARF)予防において重要であるが、処方に関する臨床ガイドラインは様々である。

■ 急性ウイルス感染症の際のGASキャリアは、不必要に抗生物質を投与されることがある。

■ 本レビューでは、さまざまなセッティングにおける GAS 咽頭炎の有病率とキャリアを評価した。

 

方法

■ ランダム効果メタアナリシスを実施した。

■ GAS+ve咽頭炎、血清学的に確認されたGAS咽頭炎、無症候性咽頭炎キャリアの有病率(保菌率)の推定値を作成した。

管理人注
GAS+ve咽頭炎というのは、For example, in North America, Finland and France, throat swabbing and prescribing antibiotics to patients with GAS culture-positive (GAS+ve) pharyngitis is recommended.
(例えば、北米、フィンランド、フランスでは、GAS培養陽性(GAS+ve)咽頭炎の患者に対して、スワブ検査と抗生物質の処方が推奨されています。)
とあるので、溶連菌培養検査陽性の溶連菌咽頭炎ととらえるようです。

■ 結果を年齢群、募集方法、所得水準で層別化した。

■ 1946年1月1日から2017年4月7日までに公表された関連文献をMedlineとEMBASEデータベースで検索した。

■ GAS+veもしくは血清学的に確認されたGAS咽頭炎に関する有病率データを報告している研究において、参加者が咽頭炎もしくは上気道感染症(upper respiratory tract infection; URTI)の症状を示したと述べられいているものを含めた。

■ 無症状のGAS感染の有病率を報告している研究は、参加者が無症状であることを明記する必要があった。

論文から引用。論文の分類フローチャート。

 

結果

■ 適格である研究285件が同定された。

論文より引用。285本の論文を同定。

■ GAS+ve咽頭炎の有病率は、臨床的なセッティングでは24.1%(95%CI 22.6~25.6%)であったが、咽頭痛を扱った研究では少なかった(”アクティブなリクルート”で10.0%; 8.1~12.4%)。

管理人注
アクティブなリクルートとパッシブなリクルートの意味に関してですが、
Raynor HA, et al. Int J Pediatr Obes 2009; 4:224-32.を参考にすると、アクティブな方法は
小児科医の紹介、標的を絞った郵送物、
→参加者は研究者/医療従事者によって特定される
パッシブな方法は
新聞、バス、インターネット、テレビ、収入表示、フェア/公民館/学校、口コミ
→参加者は自分で特定されると説明されています。

 

■ GAS+ve咽頭炎は、低・中所得国(17.6%; 14.9~20.7%)に比べ、高所得国(24.3%; 22.6~26.1%)で多くみられた。

■ 臨床的なセッティングでは、咽頭痛でスワブされた小児の約10%が血清学的に確認されたGAS咽頭炎があるが、GAS培養陽性の児の場合は約50~60%に増加した。

■ 高所得国の児の血清学的に確認された GAS 咽頭炎の有病率は 10.3%(6.6~15.7%)であり,無症候性 GASキャリアの有病率(保菌率)は 10.5%(8.4~12.9%)だった。

論文から引用。無症候性の児における溶連菌の保菌率は

■ 低・中所得国の児のGAS感染有病率(保菌率)は5.9%(4.3~8.1%)と低かった。

論文から引用。無症候性の児からの溶連菌保菌率。

 

 

結論

■ 咽頭痛のある対象の管理プログラムにおいて、GASの有病率が無症候性キャリアの率(約6~11%)に近づけば、培養陽性の患者の大半がキャリアである可能性が高いため、抗生物質治療の恩恵はほとんどないかもしれない。

 

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無症候性であっても、A群溶連菌の保菌は10%程度あるようだ。

■ 溶連菌の保菌率はけっこう高いことは認識していましたが、メタアナリシスでいいものを知らなかったので、確認していてたどり着いた報告です。

■ やや読みにくい内容でしたが、知りたい情報としては症状がなくとも検出される率でしたので、(先進国である)日本では『10%程度』と考えておけばいいのかなと思えたのが収穫でした。

■ Centorの基準で0点(溶連菌らしくない)でも、溶連菌が検出される場合があるのは、このあたりも影響するのでしょう。

■ という一方で、Centor基準を提示されたCentor医師自身が、『Fusobacterium necrophorumの咽頭炎のほうが多い』とか『C群溶連菌、G群溶連菌も多い』とかいう報告をしていたりして(その研究では15~30歳の咽頭炎からはFusobacterium necrophorumが20.5%,無症候キャリアが9.4%、A群溶連菌は咽頭炎の10.3%,無症候者1.1%、C/G群溶連菌は咽頭炎の9.0%,無症候性者の3.9%で検出)(Ann Intern Med 2015; 162:241-7.)、この分野もけっこう混沌としきてているのでは…と(勉強する側としては)げんなりしています。

 

今日のまとめ!

 ✅ A群溶連菌の保菌は、症状がなくとも10%程度あるといえそうだ。

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