以下、論文紹介と解説です。
Holm AE, et al. Short- vs. Long-Course Antibiotic Treatment for Acute Streptococcal Pharyngitis: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Antibiotics (Basel) 2020; 9.
溶連菌性咽頭炎患者を対象に、短期コースの抗生物質療法(5日以下)と長期コースの抗生物質療法(7日以上)を比較したランダム化比較試験50件のメタアナリシスを実施した。
背景
■ 溶連菌による急性咽頭炎患者に対する抗生物質の短期投与の有効性を評価する。
方法
■ 溶連菌性咽頭炎患者を対象に、短期コースの抗生物質療法(5日以下)と長期コースの抗生物質療法(7日以上)を比較したランダム化比較試験が含まれた。
■ 2つの主要アウトカムとして、早期の臨床治癒と早期の除菌が設定された。
結果
■ ランダム化試験50 件が含まれた。
■ 全体として、短期コースの抗生物質治療は長期コースの抗生物質治療と同様に早期の臨床的な治癒に有効だった(オッズ比[OR]0.85;95%信頼区間[CI]0.79~1.15)。
■ サブグループ解析では、短期コースのペニシリンは、長期コースのペニシリンと比較して、臨床的な早期軽快(OR 0.43;95%CI 0.23~0.82)や細菌学的除菌(OR 0.34;95%CI 0.19~0.61)に対する効果が低いことが示された。
■ 短期コースのマクロライドは、長期コースのペニシリンと比較して同等の効果が示唆された。
■ 最後に、短期コースのセファロスポリンは,長期コースのペニシリンと比較し、臨床的な早期軽快(OR 1.48;95%CI 1.11~1.96)および早期細菌学的改善(OR 1.60;95%CI,1.13~2.27)により効果的だった。
■ 短期コースの抗生物質治療に割り付けられた1211例(17.7%)、長期コースに割り付けられた893例(12.3%)に有害事象が発現した(OR 1.35;95%CI 1.08~1.68)。
結論
■ マクロライドとセファロスポリンは「最優先で重要な抗菌薬」のリストにはいっており、これら2種類の抗生物質を使用するメリットが不必要に使用する弊害を上回らない限り、長期コースのペニシリンVは溶連菌性咽頭炎患者の管理のための第一選択の抗生物質として継続するべきである。
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現状では、A群溶連菌咽頭炎に対する治療はペニシリンを第一選択として揺るがないと考えています。
■ 不用意に抗菌スペクトラムが広い抗菌薬を溶連菌につかうようになると、「最優先で重要な抗菌薬」の効果を減じる可能性が高くなる(耐性化する可能性が高くなる)からです。
■ 個々の患者さんでペニシリンを選択できない可能性はあるにせよ、個人的には、やはりペニシリンを第一選択としたいと思っています。
今日のまとめ!
✅ A群溶連菌による咽頭炎に対する治療は、長期ペニシリンに比較し、短期ペニシリンでは有効性が下がり短期セファロスポリンは有効である。ただし、長期ペニシリンが第一選択であることはかわらない。