以下、論文紹介と解説です。

Kim MH, et al. A multicenter study on the efficacy and safety of So-Cheong-Ryong-Tang for perennial allergic rhinitis. Complement Ther Med 2019; 45:50-6.

通年性アレルギー性鼻炎のある成人 154人を、小青竜湯内服4週間・プラセボ内服4週間にランダム化し、さらに内服終了後8週間追跡して観察した。

背景

So-Cheong-Ryong-Tang(SCRT)は、Xiao-Qing-Long-Tangや小青竜湯とも呼ばれ、伝統的韓国医学ではアレルギー性鼻炎、気管支炎、アレルギー性喘息、感冒などの治療に用いられる混合生薬である。

 

目的

■ アレルギー性鼻炎の治療におけるSCRTの有効性と安全性を評価する。

 

方法

■ 韓国における通年性アレルギー性鼻炎のある成人を対象に、二重盲検ランダム化プラセボ対照並行群間多施設共同試験を実施した。

論文より引用。研究フローチャート。

■ 臨床試験は、4 週間の SCRTもしくはプラセボの経口投与(2週間間隔で2回の訪問)と、8週間の追跡調査期間(4週間間隔で2回)で構成された。

■ プライマリアウトカムは鼻症状スコアの変化だった。

■ セカンダリアウトカムとして、鼻結膜炎QOL質問票スコア(Rhinoconjunctivitis Quality of Life Questionnaire score; RQLQ)、総血清免疫グロブリンE(IgE)、サイトカイン値、鼻腔内視鏡検査指数の変化が含まれた。

 

結果

■ SCRTは通年性アレルギー性鼻炎(perennial allergic rhinitis; PAR)患者の鼻症状とQOLを4週間の投薬で改善したが、これらの効果は投薬終了後8週間は持続しなかった。

論文より引用。TNSSスコア(TNSS, total nasal symptoms score)とRQLQ(Rhinoconjunctivitis Quality of Life Questionnaire)の変化。

■ 血清IgE、好酸球数、サイトカイン値は投薬後も変化しなかった。

■ 鼻腔内視鏡検査指数に有意差は認められなかった。

■ 重篤なAEや安全性評価の変化は認められなかった。

 

結論

■ SCRTは、慢性通年性の中等度から重度のAR患者に有効で安全な薬物である。

■ 鼻閉の症状緩和に対するSCRTの長期的な有効性を調査し、韓国伝統医学の作用機序と適応症を明らかにするためには、4週間以上の投薬期間と免疫物質検査のためのより多くの参加者を対象とした臨床研究が必要である。

 

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漢方薬におけるランダム化比較試験は決して多くはないが、そのうちの貴重な研究といえそうだ。

■ 小青竜湯(韓国と日本での小青竜湯が完全に同じものといえるかは、私にはわかりませんが)は、成人の通年性アレルギー性鼻炎に短期的な効果があるという結果です。

■ 本当は、かぜの鼻汁に有効かどうかをしりたかったのですが、調べた限りはしっかりしたRCTは見当たらず、他の漢方薬(Yeon-gyo-pae-dok-san)との比較研究があるくらいでした(Byun JS, et al. Effects of So-cheong-ryong-tang and Yeon-gyo-pae-dok-san on the common cold: randomized, double blind, placebo controlled trial. J Ethnopharmacol 2011; 133:642-6.)

■ 個人的には、いわゆる『鼻風邪』にも小青竜湯は好んで使うのですが、エビデンスというとなかなかむずかしい場合も多いです。

■ 小青竜湯は、『五味子』という生薬が含有されており、これが酸味が強く飲みにくく、かつ、この酸味が有効とされる漢方薬です。

■ ハイブリッドな知識をもっていると臨床には役立つこともままあるのですが、東洋医学的な診断と西洋医学的な診断手法のちがいなど、さまざまな問題もあります。

■ とはいえ、漢方薬におけるRCTは決しておおくはなく、貴重な研究結果といえそうです。

 

今日のまとめ!

 ✅ 小青竜湯は、成人の通年性アレルギー性鼻炎に有効だが、中止すると再燃するようだ。

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