以下、論文紹介と解説です。
Chaiyabutr C, et al. Adverse skin reactions following different types of mask usage during the COVID‐19 pandemic. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 2020.
タイの一般成人1231人に対し、マスクの種類による皮膚トラブルに関するアンケート調査を実施した。
背景
■ COVID-19パンデミックの発生以来、マスクの着用が広まり行動の急激な変化が顕著になった。
■ しかし、この対策は様々な顔面皮膚の問題を引き起こすことも知られており、それらの発生率は使用するマスクの種類によって異なる可能性がある。
目的
■ 本研究の主な目的は、COVID-19パンデミック時に一般の人々が使用したマスクの種類による皮膚有害反応の発生率を測定し、比較することだった。
方法
■ この調査研究は、2020年5月にタイで行われ、国家的なロックダウン期間中に実施された。
■ 自己記入式のアンケートはオンラインプラットフォームを介して配布された。
■ 医療従事者は除外された。
結果
■ 計1231人の参加者がアンケートに回答した。
■ 回答者のほとんどが女性(73.8%)で、30歳以上(72.1%)だった。
■ 最も一般的な試験開始時の肌タイプは、脂性肌(45.3%)と軽度の座瘡(55.8%)だった。
■ マスクの使用時間は、1日 4 時間未満(53.8%)が最も多かった。
■ マスクの種類は、布製マスクが644人(52.3%)であるのに対し、サージカルマスクは552人(44.8%)だった。
■ パンデミック中にN95マスクを使用していたのは35人(2.8%)のみだった。
■ 全体では、767人(62.3%)の参加者がマスク使用後に1,594件の皮膚有害事象を訴えていた。
■ 座瘡(にきび)の再燃が最も多く(32.2%)、次いでそう痒(22.1%)、脂性肌(14.7%)の順だった。
■ その他の皮膚反応は、紅斑性発疹(12.7%)、マスク境界部の疼痛(9.3%)、乾燥肌(4.7%)、既往症の悪化(3.6%)、擦過傷(0.6%)などだった。
■ 異なる種類のマスクの皮膚有害反応を比較すると(図1)、サージカルマスク使用による皮膚有害反応の発生率は、すべての種類の皮膚有害反応において布製マスクよりも高く、座瘡、そう痒、脂性肌で統計学的に有意な差があった。
論文から引用。サージカルマスクのほうが、布製マスクより皮膚トラブルが多い。
■ これに対し、布製マスクは綿、ポリエステル、絹織物などの様々な織物で作られている 。
■ 3種類のマスクのうち、一般人口におけるN95マスクの使用は、擦過傷、マスク境界部の痛み、既往の皮膚病の悪化という3種類の皮膚反応に対しては最も発生率が高かった。
■ N95マスクの使用に起因する一般的な皮膚反応(たとえば座瘡)の発生率は、他の2種類のマスクよりも低かった。
■ しかし、私たちの参加者は医療従事者ではないため、N95マスクの適切な装着方法を知らなかったかもしれない。
■ また、マスクが顔にぴったりとフィットしていなかったかもしれない。
■ したがって、本研究におけるN95マスクの使用による皮膚有害反応の発生率は、医療従事者の場合に報告されたものよりも低かった。
■ 皮膚反応に関連する因子を分析した(表1)。
論文から引用。
■ 女性であること、年齢が40歳以下であること、脂性肌であること、マスクを使用し始める前に座瘡があったこと、マスクの使用時間が長いこと(1日4時間以上)が皮膚反応と有意に関連した。
■ 興味深いことに、マスクの再使用は皮膚反応のリスクを増加させず、洗浄による再使用はリスクを低下させるようだった。
■ マスクの再使用が避けられない場合は、事前に洗浄することで皮膚反応のリスクを軽減することができるだろう。
結論
■ 以上のように、本研究では、3種類のマスクを日常生活で使用した場合の皮膚反応の発生率を比較検討した。
■ その結果、座瘡の再燃が最も多く、ファブリック製や布製のマスクが最も皮膚反応の発生率が低いことが判明した。
■ また、約3分の1の人がマスクをつけていて快適だと回答した。
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不織布マスクのほうが布製マスクより感染予防効果は高そうだが、一方でマスク皮膚炎は多く起こしそうという結果。ユニバーサルマスクは重要ではあるものの…
■ 最近、『不織布マスク警察』という言葉があるそうです。
■ 私は医療者ですし、サージカルマスクをしています。しかし、かぶれなどで使いにくい方もいらっしゃいますし、そもそも低年齢のお子さんはマスクがリスクになるケースもあるでしょう。
■ ユニバーサルマスクは、社会のなかで、できることをそれぞれが行うことが最終的な効果を最大化すると思います。
■ ですので、お互いのいきすぎた監視にならないように、ゆるやかに連帯できればいいなと願っています。
■ なお、マスクを洗浄…に関しては、有効性はさがるだろうと予想されます。
■ 感染予防策として推奨される方法ではないでしょうけど、不織布マスク警察とマスク皮膚炎の板挟みに悩んでいらっしゃる方は、試してもいいのかもしれません。
今日のまとめ!
✅ マスク皮膚炎は、サージカルマスクのほうが布製マスクより多く発生する。